不動産の管理会社は管理のみならず、物件の売買や分譲など、多額の借り入れを行いながら事業を進めている企業も多数あります。
規模が大きいからといって安心することはできず、規模の拡大が裏目に出ることによって資金繰りが一気に悪化、倒産することも見受けられます。
私も実際に管理会社の倒産の被害を受けたことがあるのですが、倒産前には明らかな兆候が見受けられました。
そこで今回は、経営が悪化している管理会社の兆候について解説させて頂きます。敷金や家賃などを取り損ねないように注意しましょう。
- 目次
- 1. 管理会社が倒産
- 2. 倒産前の兆候
- 2-1. 電話に出るのが遅くなる
- 2-2. 事務所を狭くし、移転する
- 2-3. 従業員が減る
- 2-4. 大家への家賃の送金が遅れる
- 2-5. 社長が電話に出ない
- 3. 管理会社が倒産する前に取り得る対策
- 3-1. 現地に行って債権を回収する
- 3-2. 少額訴訟で債権を回収する
- 4. 管理会社倒産後に債権を回収することはできるのか?
- 5. 最後に
1. 管理会社が倒産
管理会社の倒産は本当に突然やってきます。
私の場合、ある日家に一通の手紙が送られてきました。それは管理会社の代理人弁護士からの書類で、内容は当該管理会社の資産は全て管財人が保護するので、一切手を付けてはいけないというものでした。
その管理会社に関しては、私が異変を感じてから大体3か月ぐらいで一気に倒産に至ったというイメージでした。今思えば違和感を感じる場面も多かったのですが、すぐに手を打たなかったために敷金や家賃を取り損ねるという結果になってしまいました。
ここからは、実体験をもとに、管理会社倒産前の兆候についてお伝えさせて頂きます。
2. 倒産前の兆候
倒産前に現れた5つの兆候について順番にお伝えさせて頂きます。どれも小さなことですが、小さな違和感の積み重ねが倒産に繋がるということを身をもって通関しましたので、是非とも参考にして頂ければと思います。
2-1. 電話に出るのが遅くなる
初めに感じた違和感は電話に出るスピードが極端に遅くなることです。今まではすぐに電話に出てもらっていたのですが、ある日突然電話に出るスピードが極端に遅くなったのです。
私が実際に体験した際は、大体4~5回鳴ってから電話に出るというイメージでした。また、電話の裏では社員同士の雑談が聞こえてきました。倒産から9か月ぐらい前のことです。今思い返すと、ここから少しずつ会社の歯車が狂ってきたように感じます。
電話対応のスピードが極端に遅くなってしまう理由としては、以下2点が考えられます。
①経営者が会社にいないため、統率が取れなくなってしまう
会社の経営が行きづまりそうになると、経営者は運転資金を何とか確保するために銀行周りをせざるを得なくなります。
そうなると、会社内に統率を取るボスがいなくなるので、社員の緊張感がほどけてしまい、電話への対応が遅くなってしまうのです。
②倒産の雰囲気が社内に広がり、社員の士気が下がる
今までデスクに座って仕事をしていた社長が急に不在の日が多くなった。事務所にも金融機関からの電話が多数かかってくる。
こういった兆候は社員の方にも伝わり、経営がうまくいってないのではないかという不安が広がります。
そうなると、社員の方は今の業務に集中することができなくなってしまうため、電話対応がおろそかになってしまうということが考えられます。
2-2. 事務所を狭くし、移転する
経営が悪化すると、基本的には事業規模を縮小し、不要な支出を極限まで押さえる必要があります。
事業規模を縮小すると、おのずと必要となる社員の数も減り、事務所が手広くなります。
資金繰りが悪化しているにも関わらず、広い事務所をそのまま維持する必要は全くありませんので、会社を移転するという結果になるのです。
私の場合は、倒産の3か月ほど前に事務所移転がありました。
2-3. 従業員が減る
上記2-2とも関連しますが、資金繰りが悪化すると、収益が出ている事業を売却し、何とかして借入金の返済が滞らないようにします。
そして、事業を売却すると基本的に社員が余ります。社員が余れば、資金繰りを改善するためにはリストラせざるを得なくなります。
不動産業は人材の流動性が極めて高い業界であり、退職の流れも他の業界ほど硬直的にならないことが一般的です。
急速に社員の数が減っていないか注意するようにしましょう。
私の場合も、事務所の移転に伴って人がバタバタと減って行きました。他の社員から聞いた限りでは「依願退職」とのことでしたが、実際に本人に話を聞くと、会社を辞めさせられたということでした。
2-4. 大家への家賃の送金が遅れる
大家への家賃の送金の遅れは管理会社として最もやっていはいけないミスの一つであり、これが続くようであれば倒産は近いと考えた方が良いでしょう。
なぜなら、大家の送金が遅れることにより、オーナーから銀行への返済が滞り、銀行がそのオーナーへの信頼をなくしてしまうかもしれないからです。
銀行は返済の滞納に対しては極めて厳しい対応をします。銀行は過去の経験から、期日に返済をしない借主はトラブルを起こす可能性が高いということを知っているからです。
そして、この返済の遅れはその原因が借手にない場合においても、その事情を考慮してくれる金融機関は少ないことを認識しておいた方が良いでしょう。
なぜなら、銀行で融資を決定する上では営業部だけではなく、審査部というコーポレート部門による審査を通貨する必要があり、返済の滞納という事実はどのような理由であれ、審査部にとってのマイナス評価に変わりはないからです。
管理会社にとって期日通りの家賃送金は厳守しなければいけません。
そして、期日を守れないということは、非常に重要や家賃送金業務よりも重要な業務、すなわち自社が借りている借金の返済があることに他なりません。
家賃の送金遅れが一度でもあった場合は管理会社の変更も考えた方が良いと思います。
2-5. 社長が電話に出ない
ここまでくると倒産が確定的になるのですが、倒産間際の会社は社長に各方面からの問い合わせが殺到し、とても社長1人では処理しきれなくなってしまいます。
そもそも社長は1つ1つの細かい業務の内容を把握してはいません。
そこで何をするかというと、社長は各方面からの電話に一切出ないという行動を取り始めます。こうなると、倒産するのは時間の問題ですので、債権などがある場合は管理会社に訪問の上、早急に返してして貰うようにしましょう。
私の場合、社長が電話に出なくなってから2週間後に代理人の弁護士から破産の通知が送られてきました。
3. 管理会社が倒産する前に取り得る対策
ここからは、管理会社に倒産の兆候が見られた場合にどういった対策を取ることができるのかという点について説明させて頂きます。
3-1. 現地に行って債権を回収する
最も手っ取り早い方法は、管理会社に自ら訪問して債権の回収を図るという方法があります。
恐らく社長からはもう少し待って欲しいというメッセージを受けると思いますが、待ってはいけません。
1円でも多く回収するよう粘り強く交渉しましょう。
交渉の際に有効な手段が、「お金を返してくれないのであれば少額訴訟を行い、訴訟費用含めて請求を行う」という今後の方針を相手に伝えることです。
債務者は騒がれると困る債権者から返済を進めていきます。
私が聞いた話では、倒産した会社が管理する物件の大家が大学の法学部教授であり、その教授には真っ先に送金が行われたという話も聞きます。
あなたが債権回収に関する知識が豊富であり、先に返済した方が得と管理会社に思わせるようにしましょう。
3-2. 少額訴訟で債権を回収する
次に、少額訴訟で債権を回収するという方法がありますが、少額訴訟の具体的な進め方については現在コラムの作成中にて、完成後、別途コラムでご紹介させて頂きます。
4. 管理会社倒産後に債権を取り戻すことはできるのか?
最後に、管理会社が倒産してしまった場合、債権を取り戻すことができるのかという点についてお伝えさせて頂きます。
結論からお伝えすると、倒産後に債権を取り戻すことができる可能性は極めてゼロに近いと考えた方が良いと思います。
なぜなら、不動産業者は基本的に資産を保有せずに事業を開始することができ(メーカーなどは商品があります)、差し押さえ可能な資産がほとんどないこと、そして、仮に不動産を保有していた場合でも、その不動産には銀行の抵当権が設定されており、不動産売却後の収入は銀行に優先的に返済されてしまうことから、一般債権者に配当が行われる可能性は極めて低いからです。
また、不動産に含み益がある場合は当該不動産を売却して現金を作ることが一般的ですので、売却していない不動産があるということはその不動産は含み損を抱えていると考えることができます。
5. 最後に
過去に大きな成功をおさめた会社ほど、そのプライドからリストラ等の手を打つのが遅れがちになり、倒産の兆候が見えたら一気に倒産ということも起こり得ます。
管理会社以外の地場賃貸会社との関係作りなどを通じ、情報収集のアンテナを広げ、迅速な対応をすることができるよう心がけましょう。