最近は賃貸ポータルサイトなどでも定期借家契約と記載された物件の数が多くなってきました。
定期借家契約と聞くと、契約が終わったら必ず追い出されてしまうというイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実際はそうではありません。
定期借家契約の特徴をしっかりと把握し、有利な条件で部屋を借りることができるようにしましょう。
- 目次
- 1. 定期借家契約(借地借家法)とは?
- 2. 普通借家契約と定期借家契約の違いは?
- 2-1. 普通借家契約と定期借家契約の最大の違い
- 2-2. 普通借家契約と定期借家契約のその他違い
- 3. 定期借家契約のポイント
- 3-1. 契約期間中の途中解約は不可能なのか?
- 3-2. 再契約はできないのか?
- 3-3. 更新料は発生するのか?
- 4. 最後に
1. 定期借家契約(借地借家法)とは?
まずは定期借家契約が何なのかということについて説明させて頂きます。
定期借家契約は借地借家法に基づいた契約方法のことを言います。
ここで、借地借家法の位置づけを理解するためには民法の全体像を理解する必要がありますので、図と共に全体像を説明させて頂きます。
以下の図をご参照下さい。
まず、人と人の契約は民法で規定されており、基本的には「契約自由の原則」に基づいて当事者間で自由に契約条件を定めることができます。
例えば、「賃貸借契約は1年間、契約更新の際には50万円の更新料を払う」といった条件で契約することも当事者の自由です。
特に物件の数が不足していた戦後は貸主が立場上優位であり、借手に対して厳しい条件を提示していたという話も聞きます。
しかし、それでは借主は安心して生活することができません。そこで、借主を保護するという観点から「借地借家法」が制定されたのです。
つまり、契約は民法に基づいて当事者間で自由に取り決めて良いのが原則だが、建物の賃貸に関しては借地借家法の規定を守らなければいけないという建てつけになったのです。
契約自由の民法の規定に対し、特定の分野にフィルターをかけるというイメージで考えて頂ければと思います。
例えば、宅地建物取引業法は不動産の買手を保護するという目的で制定された法律です。
2. 普通借家契約と定期借家契約の違いは?
民法と借地借家法の関係性について理解して頂いた上で、次に定期借家契約がどういった契約なのかという点に迫っていきましょう。
まずおさえて頂きたいのが、普通借家契約も定期借家契約も「借地借家法」に規定されている契約方式であり、当事者間で自由に契約方式を決めることができるという点です。
当事者が合意すればどちらの契約方式でも問題はありません。
2-1. 普通借家契約と定期借家契約の最大の違い
上述の通り、普通借家契約と定期借家契約は当事者間で自由に決めることができるのですが、その内容は大きく異なります。
特に大きな違いが、「法定更新」の有無です。
(法定の意味を詳しく知りたい方は「法定」とは何なのか?具体例と共に理解するというコラムをご参照頂ければと思います。)
つまり、普通借家契約では、契約が自動的に更新されてしまいますが、定期借家契約では契約期間の満了に伴って確定的に契約が終わります。
借主は、契約の満了に伴って部屋を出ていかないといけないのです。
2-2. 普通借家契約と定期借家契約のその他違い
上記2-1.のポイントが定期契約と普通借家契約の一番大きな違いですが、その他の違いについても簡単に整理しましたので以下ご参照頂ければと思います。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
契約方法 | 書面に限る | 口頭でも可能 |
契約条件 | 契約書とは別に、更新がない旨合意した書類を作成の上、説明する必要あり。説明しない場合は無効。 | 特段なし |
契約期間 | 規定なし | 1年以上 |
解約通知 | 契約期間1年以上の契約の場合、期間満了から計算して6か月前の通知が必要。 | 6か月前通知が必要。 |
借地借家法における定期建物賃貸借関連の条項はあまり多くありませんので、ご参考まで以下にご紹介させて頂きます。重要なポイントは太字にさせて頂いております。
(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
出典:借地借家法
3. 定期借家契約におけるポイント
上記で定期借家契約の概要を掴んで頂いた上で、定期借家契約におけるポイントをQ&A形式で紹介させて頂きます。
3-1. 契約期間中の途中解約は不可能なのか?
解約可能ですが、契約書に途中解約に関する条文(特約条項)を入れる必要があります。
普通賃貸借契約の場合も基本的には解約に関する条項が入っていますので、それと同じ文言を用いれば貸主との交渉においても特段揉めることはないと思います。
3-2. 再契約はできないのか?
当事者間での取り決めがあれば再契約可能ですが、再契約の条件については詳細に借主・貸主間で詰めておいた方がよいでしょう。
「基本的には再契約可能」といった文言では後で揉めてしまう可能性が高くなります。
例えば、「貸主が転勤から戻ってきた場合のみ再契約不可」。といった具体的な解約事例を記載しておけばトラブルを避けることができます。
3-3. 更新料は発生するのか?
定期借家契約は基本的に契約の更新がありませんので、更新料は発生しません。
しかし「2年毎に賃料の1か月分を借主は貸主に対して支払う」という文言のように、実質更新料とみなすような契約条項を設定することも可能ですので、更新料とは違う名前で実質的に更新料が発生する可能性もあることは意識しておきましょう。
4. 最後に
定期借家契約で一番気を付けるべきポイントは、再契約の条件であり、それ以外では当事者間で大きなトラブルが発生することは少ないでしょう。
再契約の条件を曖昧な記載にせず、借主・貸主ともに納得できる条件で定期借家契約を結ぶようにしましょう。