国内の不動産は利回りの低下が続いています。都心では5%台の物件も良く見受けられるようになりました。
一般的な物件の利回りが低下すると相対的に利回りが高い物件に目が行くこともありますよね。その中でも借地権物件は利回りが高いため、興味を持つ方も多いのではないかと思います。
しかし、借地権物件を本当に買っても良いのか、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。特に借地権物件に融資を組むことによって物件の買い増しが難しくなると考えている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、借地権の詳細と同時に、借地権物件を購入する前に知っておくべき情報をお伝えさせていただきます。
- 目次
- 1. 借地権物件とは?
- 2. 借地権物件の場合の具体的な検討事項
- 2-1. 銀行の融資は付くのか?
- 2-2. 信用毀損はあり得るのか(次の物件購入に支障はあるのか)?
- 2-3. 売却に時間がかかってしまうのではないか
- 2-4. 売却にあたっての障壁はないのか?
- 3. 最後に
1. 借地権物件とは?
借地権物件とは土地の権利が所有権ではなく、借地権である物件のことをいいます。
そして、借地権と一言で言っても更に細かい分類があり、詳細な説明をさせていただくと長くなってしまいますので、借地権の分類について別のコラムで紹介させていただいております。
ここからの記載は、借地権の更なる分類である定期借地権や旧賃借権といった言葉を理解していることを前提としてお話しさせていただきますので、これらの言葉をしっかりと理解したい方は、分かりづらい借地権の種類・特徴をスッキリと解説というコラムを事前にご参照いただければと思います。
2. 借地権物件の購入検討前に際に知っておくべきこと
ここから早速借地権物件の購入検討にあたって知っておくべき点についてご紹介させていただきます。
なお、ここでの「借地権」は①定期借地権、②旧法賃借権、③新賃借権の3つを示しており、地上権は所有権とほとんど同じ権利であることから、今回のコラムでの「借地権」には含まないという点も合わせお含み置きいただければと思います。
2-1. 銀行の融資は付くのか?
借地権物件の購入の検討にあたり、一番の懸念事項は金融機関からの融資です。
まず定期借地権の場合、融資を行ってくれる銀行はないと考えておいた方が良いでしょう。なぜなら、定期借地権は契約の満了にあたり借地契約が確定的に終了する契約であるため、銀行として定期借地権を担保価値として見ることができないからです。
では旧法賃借権はどうなのかというと、融資してくれる金融機関はありますが、それでも新築物件の場合などが主であり、築古の物件で金融機関が融資をすることはほとんどありません。
なぜなら、借地権物権は最悪の場合、(賃借権であっても)土地を地主に返さなければいけないリスクがあり、このリスクがあることから金融機関は土地を担保価値としてみることが難しいのです。
そして、ここでの最悪の場合とは、建物がぼろぼろになってなくなってしまう場合のことを言います。借地権の場合、建物が滅失(自然消滅)した場合は借地権は終了してしまうのです。
しっかりと建物を管理している限り建物が滅失することは考えらないのですが、金融機関としては全てのリスクに対する対応策を整理した上で融資を行いますから、上記の建物滅失リスクへの対応策を購入希望者に対して求めてくる場合があるという点は頭の片隅に置いておきましょう。
また、土地の権利が所有権である物件が多数ある中で、あえて借地権物件に融資する必要性が薄いと言うこともできます。
つまり、借地権物件の場合、融資を組成することは基本的に難しいと考えておいた方がよいでしょう。
2-2. 信用棄損はあり得るのか(次の物件購入に支障はあるのか)?
次に、信用棄損について考えてみましょう。借地権物件を購入すると次の物件を購入することができない、といった話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
そして、その理由として挙げられるのは、借地権物件は金融機関にとって積算価格が低い物件なので、信用棄損と考えられてしまうという考え方です。
この点については、不動産投資における積算価格の本質というコラムに信用棄損とは何なのかという点についてお伝えさせて頂いてますので、参考にして頂ければと思います。
上記コラムでは積算価格が低い物件に対して高額の融資を組んだ場合、2棟目の購入にあたって信用棄損となってしまうのかという点についてお伝えさせて頂いておりますが、結論としては信用棄損になる可能性は低いです。
借地権の場合も担保価値が低いという点では積算価格が低い物件と同じように考えることができますが、担保価値が低いことと2棟目の物件の融資可否はほとんど関係しません。
具体例で考えてみます。以下の図において、物件1号が借地権物件であり、積算評価が低い一方、家賃収入がローンの返済額を大きく上回っているとしましょう。
ここで、次の物件の購入を検討した場合、物件1号で金融機関が気にする点は物件1号の積算価格ではなく、物件1号の収支です。
銀行としてはローンの返済をしっかりしてくれることを確認することが重要であり、毎月の収支がしっかりと回っている方が積算価格よりも重要なのです。
2-3. 売却に時間がかかってしまうのではないか?
次に、借地権物件の場合は買手が限られるため、売却に時間がかかってしまうという疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないかと思います。
この点に対する回答は、「はい」でもあり「いいえ」でもあるということができます。
なぜなら、不動産は結局マーケット商品ですので、市況価格と比べて安ければ買手は必ず出てくるからです。
借地権物件の場合、土地の権利が所有権の場合と比べて安い価格で買うことができるというのが一般的であり、その価格が他の買主にとって魅力的であれば買主は見つかります。
ただし、融資の組成が難しいというのは事実ですので、あまりにも高額の物件(1億円超)の場合は、買手の絶対数が少なくなることから、買手を見つけることが難しくなってしまう可能性があるという点には注意しましょう。
2-4. 売却に当たっての制約はないのか?
次に、売却にあたっての制約ですが、旧賃借権、新賃借権、定期借地権のいずれの場合においても土地を使う権利を誰かに譲渡する場合、地主の承諾が必要となります。
なぜ地主の承諾が必要なのかという点については、借地権が「債権契約だから」ということが挙げられます。なぜ債権契約の場合に地主の承諾が必要かしっかりと理解したい方は、物権と債権の違いを具体例と共に2分で理解し、地上権を学ぶというコラムをご参照いただければと思います。
つまり、いくら買手が見つかっても地主の承諾を得ることができなければ売却することができませんので注意しましょう。
一般的には承諾料としてお金を地主に支払うことによって権利の譲渡を行う場合が多いようです。
3. 最後に
借地権の検討においては、まず定期借地権かどうかという点を意識するようにしましょう。定期借地権の場合、契約が確定的に終了するので次の買手を見つけるのは非常に困難であり、融資の組成は不可能に近いです。
一方、土地の権利が賃借権の場合、融資が付きづらいのは確かですが、その分価格が下がることもあり、リスクに伴う収益を得ることができるのであれば借地権物件も十分検討の候補に入ってきます。
借地権物件への融資に強い金融機関を知っている仲介会社の中には、借地権物件に特化している会社もあります。借地権物件の購入検討に際しては、こういった業者等を探すなど、戦略を立てながら進めることをお勧めします。