敷金の敷引や償却という言葉。
契約したときには返ってくるお金だと思っていたけど、退去した時に管理会社が勝手に引いている。
こんな経験をした方も多いのではないでしょうか?
ネットで調べてみても、明確な回答が無く、結局よく分からないですよね。
結局敷金が返ってくるのかどうか、しっかりと理解しておきたいところ。
そこで今回は、敷引と敷金償却の意味について、実際の裁判を通じて感じたことをお伝えします。
不動産会社にお金を取られるのは何か嫌ですよね。
結論:裁判しないと分からない
結論からお伝えすると、敷引や償却がどういった性質のお金なのか(敷金が返ってくるかどうか)は、裁判しないと分かりません。
すいません。。何かとっても中途半端な結論ですよね。なぜこのような結論になるのか、1つずつ説明していきます。
また、今回の記事では裁判で敷金を取り戻す可能性を高める方法も合わせて説明していきます。
豆知識:敷金の償却、敷引など、言葉は違っても意味は同じ
ちなみに、この記事のタイトルは「償却敷金」ですが、中には「敷引」という表現の場合もあるかもしれません。
実際のところは、言葉が違っても解釈は同じですので、気にしなくても大丈夫です。つまり、敷引=償却敷金です。
まあ、どんな表現だとしても曖昧ですよね。。
では、本題に入っていきましょう。
曖昧な言葉=判例が大切
解釈があいまいなものに対する考え方については、裁判での判例が重要となります。
解釈がはっきりしていれば、そもそも裁判にはならないですからね。
では、過去の裁判において「敷引」や「敷金の償却」はどういった解釈だったのでしょうか?
過去、裁判では多くの判例がありますが、ポイントを絞って解説しますね。
- 償却敷金は、敷金である(原状回復費に充当すべきである)という判決と、礼金である。という判決がある。
- どちらかというと、敷金である。という判断をされていることの方が多い。
上記の通り、過去の裁判では、敷金であるという判断をされることが多いですが、礼金であるという判断をされている場合もあります。
こういった場合に裁判をすると、どうなるのでしょうか?実際に裁判をした経験からお伝えします。
最後は裁判官の判断。和解しなければ、0か1になる
これが今回裁判をして得た重要なポイントです。
過去の判例がどうであったとしても、最後は裁判官の判断です。
裁判官が「償却敷金は礼金」と言えば、それは礼金になってしまうのです。
そして、ここで押さえておきたいポイントがあります。それは、裁判官が判決を下す時、「折衷案」を出すことはない。ということです。
具体的には、「ここは両者の間を取り持って、償却敷金の内、半分は礼金という扱いにしましょう。」といった判断がされることはない。ということです。
なぜ、こういった判断ができないのかというと、裁判官は「判決に対し、根拠をともなう、合理的な理由を言わなければいけない」からです。
「償却敷金の内、半分を礼金にする」という判断は、根拠がありません。これは裁判官の「気持ち」ですよね(笑)
ただ、裁判を円滑にまとめるためには、折衷案でも良い気がしてきませんか?
実際は、裁判官が合理的な理由を言わないといけない理由がちゃんとあるのです。
その理由とは、「裁判官が下した判決というのは、記録として残され、後世に残るもの」というものです。
違う言い方をすると、明確な根拠がない判決を出してしまうと、その裁判官が後で責められる可能性があるのです。
裁判官としても、変な判決をすることで、後々揉めるのは避けたいところ。
つまり、裁判官も判決を下すときは「必死」なのです。この点をしっかりと意識しておきましょう。
だからこそ、和解は一つの解決手段
ここまでお伝えした通り、裁判官は、判決を下す際は「シロ」か「クロ」かハッキリさせる必要があります。
つまり、あなたが負けてしまった場合、1円も取り返すことができなくなって可能性があるのです。
だからこそ、和解で解決するのも一つの手段だということを頭に入れておきましょう。
実際の裁判でも、9割は和解で解決するみたいですよ!
裁判官を敵に回して良いことはありません。だからこそ、状況に応じて和解に応じることも大切なのです。
それでも戦いたい場合は、資料を十分に備えよう
ただ、相手の対応に対してどうしても納得することができない。という場合もあるかと思います。
そういった時は、徹底的に戦うというのも一つの手段です。
裁判をする時点で、相手のことが許せない!という場合が多いですよね。
そこで、敷引の返還で裁判をする場合に意識しておくべきポイントについてご紹介しましょう。
1. 消費者契約法
借主が法人ではなく個人の場合、消費者契約法を武器にできる可能性があります。
消費者契約法の趣旨を一言でいうと、このような表現になります。
- 消費者にとって一方的に不利になる特約は無効
つまり、敷引というのは消費者が一般的に認識していない言葉であり、且つそれが礼金であれば、消費者が一方的に不利になる。だから、その特約は無効。ということです。
もちろん、最後は裁判官の判断になりますが、消費者契約法が武器になるかもしれないという点は意識しておいて損はありません。
2. 判例を集める
2つ目の準備は、判例をとにかく集めるということです。
情報は集めれば集めるだけ武器になります。裁判官としても、全ての判例を頭に入れることは不可能です。
だからこそ、インターネットなどを通じて判例を集め、その情報をわかりやすく整理して裁判官に伝えてあげましょう。
裁判官も忙しいので、全ての判例を集めたりはしないのです。
償却敷金の性質については、はじめにお伝えした通り「敷金である」という判決が下されている場合の方が多いです。つまり、情報を集めれば集めるほど借主側が有利になる可能性が高まります。
当たり前ですが、不利な判例を引用する必要は全くありません。こちらが有利になる判決だけを集めましょう。
まとめ
償却敷金(敷引)の解釈についてお伝えしました。
結論としては、裁判官次第ということになりますが、ここまでお伝えした通り、裁判を有利に進めるためにできることもあります。
弁護士費用がかかるというデメリットがありますが、裁判をやってみる。ということは決して悪いことではありませんよ!
この記事が、敷金返却において少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
具体的な書類の作成方法や、実際の裁判の流れは別途まとめて紹介しますので、楽しみにしていて下さい!