• 日本人は本当に新築好きなのか?日本人の考え方をもとに検証 – 売主のミカタ

    日本人は本当に新築好きなのか?日本人の考え方をもとに検証

    日本人は新しい物が好きと言われます。家の場合も同様であり、中古物件よりも新築物件の方が好まれる傾向にあります。

    しかし、本当に日本人は新しいものが好きなのでしょうか?

    今後の新築物件の動向を探る上でも大切なテーマだと思いますので、今回のコラムで検討させていただきます。

    1. 新品と中古の両方が市場に存在する商品を列挙

    まず、家との比較をするため、市場に新品と中古の両方が存在する商品を列挙してみました。以下それぞれの項目ごとに、新品が人気なのか、中古が人気なのか考えていこうと思います。

    • パソコン
    • 家具
    • 家電
    • 時計

    1-1. 車

    例えば、煙草を吸わない人にとっては社内にヤニの匂いがないことは絶対条件だと思います。また、大きな傷がついていたり、内装が汚かったりした場合、購入を見送るという選択になりそうです。

    一方で、車の設備そのものの古さ(カセットしか入らないなど)を気にする方はあまりいないかなあというイメージです。

    車は移動のための手段であって、音楽を聴くことが目的ではないですからね。

    1-2. パソコン

    パソコンは、見た目が汚くても性能が良くて安ければ買手は見つかると思います。値段と性能のバランスですね。

    1-3. 家具

    家具は使いこむことによってアンティーク感が出たりするので、一概に古くて汚い家具は敬遠されるとは言い切れなさそうです。

    一方で椅子などの肌に触れる家具に関しては、シミなどがついている場合は敬遠されてしまいそうです。最近は新品の家具でもIKEAやニトリで安く買えますので、そういった意味では中古市場は厳しいかもしれません。 。

    1-4. 家電

    家電はパソコンと同じような考え方だと思います。結局は値段と性能のかね合いですね。

    電動歯ブラシやシェーバーといった家電を中古で買うのは抵抗があると思いますが、肌に触れないものであれば気にならないですね。

    1-5. 時計

    これも最低限の清潔感があることが必要だと思います。ベルトが錆びている、シミがついているといった場合では、なかなか買手は見つからないのではないかと思います。

    2. 検討して見えてきた新品・中古を選ぶ基準

    さて、上記の検討を行った結果、ある傾向が見えてきましたね。 それは、身に付けるものは最低限の清潔感が必要。それ以外は価格と性能とのバランスによって決まる。というものです。 極端な話、下着やベッドのシーツといったアイテムの中古市場などは絶対に流行らないですよね。

    2-1. 家に関しててもこの法則が当てはまる?

    それでは、上記のようなイメージを踏まえた上で、家がどういった扱いになるのかという点について考えてみましょう。

    家は生活に密着しているものですが、常に肌に接するようなものでもありません。 一方で、車のような”輸送”という目的に対し、家は”快適性”や”リラックス”をもたらすものですので、最低限の清潔感は必要だと思います。

    しかし、現実にはいくら部屋の内装がきれいだったとしても、日本人は新築物件を好みます。

    ではこのギャップはどこから生まれてくるのでしょうか? 家は上述のアイテムとは違った特徴がありそうです。そこで、一般的なアイテムの傾向からは見えてこなかった日本人の新築好きの理由に関し、私の考えを述べさせて頂きます。

    3. 日本人が新築好きな理由

    上記のイメージを持った上で、私が考える日本人の新築好きの理由について紹介させていただきます。

    3-1. 投資に対する知識の欠如

    日本人は基本的に家(一軒家)を投資商品として見ません。一方で、海外では一軒家は投資商品の1つです。

    投資商品の一つであるから、維持管理をしっかりと行います。投資用のマンションなどであれば、所有者同士で修繕費用を積み立てておくのが一般的ですが、一軒家の場合は修繕費用の積み立てなどは所有者の自由です。

    その結果、修繕費用が貯まらず、適切な管理ができなくなり、家の老朽化が早急に進んでしまうのです。 木造建築の法定耐用年数は22年ですが、実際にはメンテナンスや躯体次第で40年、50年、60年と運営し続けることは十分可能です。

    一方で、ほとんどの方は家のメンテナンスを行わないため、築年数が経過している家=ボロボロの家というイメージが市場に染みついてしまい、中古物件を買うというイメージが湧きづらいのだと思います。

    さらに、日本人は家を投資商品として見ないため、汎用性のない特徴的な家が生まれてしまうのも特徴です。

    相当に細長い土地に無理をして建てた住宅、狭い敷地に4階建ての家を建てたが、階段の上り下りが苦痛でしかない住宅などです。

    こういった中古物件の買手のみならず、借手すらなかなか見つからないでしょう。 投資物件として考えないからこそ、収益を確保できない設計となり、年数の経過と共に市場価値がどんどん下がると同時に、修繕などを行わないために躯体の損傷が激しくなっていく。

    その結果築古のイメージが悪くなり、新築物件の建築が増えていく。このような流れができてしまっているのではないかと思います。

    3-2. 横並び文化

    日本人は良くも悪くも横並び文化であり、出る杭が打たれる傾向にあります。

    つまり、マイホームに関しても、新築を建てることが一般的なサラリーマン世帯にとって中古物件を購入することは他の人と違うことであり、同僚や上司との会話を通じ、新築物件を購入することが当たり前という考え方が根付いてしまうのだと思います。

    また、周囲がみんなマイホームを建てているのに、自分だけ建てないのはカッコ悪いという見栄からも、盲目的に新築物件を購入してしまいがちです。

    例えば、車であれば、人生に1度の買い物ではなく、且つ今は世帯で車を2台保有することも珍しくないほど身近なモノとなりましたので、他の人がどの車に乗っているか、その車が新車か中古車かという点について横並び意識が働くことがなくなり、中古車を購入する選択肢も十分に考えられるようになったと私は考えています。

    この横並び意識は日本に限ったことではなく、海外でも見受けられるのですが(経済学でも、周囲の目があるのでいきなり生活水準を変えることは難しいというラチェット効果という言葉があります。)、日本の横並び意識はかなり高いと思います。

    4. 今後の住宅市場はどうなるのか?

    それでは今後どうなるのかという点が気になるところですが、私は、今後日本は中古の物件が増えていくと考えています。

    なぜなら、これからは終身雇用ではなく、会社を選択する時代に少しずつシフトしていき、その結果として横並び意識も薄れていくことが考えられること、更に、不動産投資家が増えているという事実が証明するように、投資に対する知識を兼ね備えた人が増えていくことが考えられるからです。

    また、最近リフォームが注目されているように、中古物件をきれいに再生させるという動きも活発化しています。

    ずっと住み続けるのであれば、自分好みの間取りで家を建てることができる新築は大変魅力的ですが、将来の転勤や不測の事態が発生することを踏まえると、中古住宅を購入するという選択肢も是非頭の片隅に置いて頂ければと思います。

    この記事を書いた人:大橋亮太

    三井物産株式会社で約7年働いた後、2015年に株式会社ムーブウィルを設立。両手仲介への違和感から買側の仲介に入ることを止め、売主側の味方だけをするサイト「売主の味方」を立ち上げる。

    ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士

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