不動産投資に興味があり、これから実際に気になる物件を選定の上、内見にも行ってみようと考えているが、数多くある物件をどうやって絞り込んでいけば良いのか分からない。
色々な情報が出回っているが、どの情報が正しいのか分からない。
これらは不動産投資を始めると必ず突き当たる壁であり、どの大家の方もこの壁を乗り越えてきました。
一方、本などを見ても「利回り○○%以上の物件を狙うべき」など、自分の属性と直結した情報は中々掲載されていないのが現実です。
そこで今回は、自分の属性から購入できる可能性が高い物件の絞り込み方について紹介させて頂きます。
絞り込み方のイメージを膨らませ、物件の内見・購入につなげていきましょう。
- 目次
- 1. 前提条件
- 2. 融資条件を逆算して算出する
- 3. 融資条件から物件を絞り込む
- 4. ポータルサイトで絞り込む
- 4-1. 検索結果を確認
- 5. 更なる絞り込みを進める
- 5-1. 駅からの距離による絞り込み
- 5-2. 間取り・用途からの絞り込み
- 5-3. 空室状況からの絞り込み
- 6. 借入条件を緩めて検討する
- 7. 最後に
1. 前提条件
投資用不動産の購入にあたっては、ほとんどの方が融資を組んだ上で不動産を購入します。
逆に考えれば、全額自己資金で投資用の不動産を購入することは投資の効率性の観点から見ると良い選択ということはできません。
つまり、不動産投資と融資は切っても切れない関係なのです。
一方、融資額などは借りる方の属性等によっても大きく異なるため、一概に決定することが難しいというのが現状です。
しかし、そのような場合でもそれぞれの属性に応じて簡単に検討できる方法があります。
それは、「月々の余剰金」から購入することができる物件を絞り込むという方法です。もう少し具体的に説明させて頂くと、月々の余剰金と月々のローン返済額が同じになる条件であれば融資を受けることができると想定し、物件のしぼり込みを行うというイメージです。
以下簡単に購入希望者の属性を設定させて頂きましたので、参考にして頂ければと思います。
(年齢や家族構成は今回の検討において意味を持っていませんが、イメージをふくらませるために記載させて頂いております。)
項目 | 前提条件 |
年齢 | 35歳 |
家族構成 | 妻、子供はいない |
収入 | 550万円(夫婦合算) |
月々の貯金 | 15万円 |
2. 融資条件を逆算して算出する
上記の前提条件に基づき、融資条件を逆算してみましょう。
逆算にあたっては、毎月の余剰資金から融資条件を計算します。具体的には、上述の通り月々の余剰金とローンの返済額が同額になるような融資条件を探します。
上記の前提条件においては、毎月15万円を貯金に回すことができていました。この場合に2,000万円を借りると、借入期間と金利によって、月々の返済額は以下のようになります。
ここで、上図の下にあるイメージを見て下さい。OK!と出ている条件は月々の余剰資金で返済することができる借入条件を示しています。
この場合、2,000万円を借りて15年返済する場合、金利4%までであれば空室率100%でもローンの返済ができるという計算です。
このエクセルファイルは以下リンク先で配布しておりますので、参考にして頂ければと思います。
3. 融資条件から対象物件を選定する
次に、融資条件からどういった物件であれば購入することができるかという点について考えていきましょう。
つまり、15年ローンを組成することができる物件という条件から逆算して検索するというイメージです。
具体的には、建物の構造と築年数を見て物件を絞り込んでいきます。なぜなら、金融機関は基本的に法定耐用年数内でしか融資をしないからです。
つまり、構造別の「法定耐用年数 – 築年数」が融資期間になります。
以下に構造別の法定耐用年数をまとめさせていただきましたのでご参照いただければと思います。
構造 | 法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
重量鉄骨 | 34年 |
RC | 47年 |
今回は木造の場合で絞り込みをしていきましょう。
木造物件で15年の融資を組むためには、22年 – 15年 = 7年より、築7年以内の物件を見つける必要があります。
4. ポータルサイトで絞り込む
ここから実際にポータルサイトで絞り込みをかけていきます。今回は健美家のホームページを活用しながら絞り込みをかけていきましょう。
健美家のホームページの左上にある「条件を設定して検索」をクリックしましょう。
すると、具体的な検索条件のページが出てきます。ここで、上記3.で設定した前提条件等を入力していきます。具体的に入力する項目は以下の通りです。
- 価格:2,000万円
- 築年数:7年以内
- 構造:木造
他の項目に関しては、「物件種別」の欄には全ての物件種類にチェックしましょう。他の項目は特段入力する必要はありません。入力が終わったら、「検索」ボタンをクリックしましょう。
4-1. 検索結果を確認
上記で検索条件を入れた結果を見ていきます。検索の結果、具体的な検討をすることができる物件が43件見つかりました。
5. 更なる絞り込みを進める
具体的に融資組成の可能性がある物件を絞り込むことができたら、更に具体的な絞り込みを進めていきましょう。
絞り込みの方法はかなり沢山あるのですが、今回は融資の組成確率を高めるという観点でどうやって絞り込むのかという情報をお伝えさせて頂きます。
5-1. 駅からの距離による絞り込み
駅からの距離は金融機関の融資姿勢に大きな影響を与えますので、融資が付きやすい物件、かつ空室が出ても埋めやすい物件という観点で、駅からの距離による絞り込みを進めていきましょう。
以下は絞り込みをした検索結果なのですが、検索結果の下に再度絞り込みをすることができる欄があります。
下スクロール後の検索条件画面に、追加の条件を入れましょう。駅徒歩10分以内というのは融資組成において重要なポイントの1つになりますので、10分以内という条件を追加します。
駅徒歩10分という条件を入れて検索した結果がこちらです。43件から一気に7件まで絞り込むことができました。
5-2. 間取り・用途からの絞り込み
次に、間取りや用途から絞り込みをかけていきましょう。融資を組成しやすくするという観点では商業用物件よりも居住用物件の方が融資が組みやすいです。
なぜなら、商業用物件は賃料が高い分、マーケットの影響を受けやすく、空室が長期にわたってしまう可能性がある(つまり、リスクが高い)からです。
また、ファミリー向け物件かシングル向け物件かは意見が分かれるところですが、融資組成という観点ではファミリー向け物件の方が融資が組みやすい傾向にあります。なぜなら、ファミリー向け物件は建物の延べ床面積が広いため、積算価格が高くなるからです。
なぜ積算価格が高い物件だと融資が組みやすいのかという点を深く理解したい方は、不動産投資における積算価格の本質というコラムをご参照頂ければと思います。
以下7物件の検索結果を列挙させて頂きましたが、一番上の物件は店舗であること、そして一番上と二番目の物件は同じ物件であることが分かりますので、この2つの物件は検討の対象から外れます。
また、下から3番目の物件に関しても事務所付き住宅ということなので、検討から外しましょう。
これで物件を4つまで絞り込むことができました。
5-3. 空室状況からの絞り込み
次に、空室状況からの絞り込みをかけていきましょう。融資を組成する際には空室が多い物件よりは空室が少ない物件の方が融資の組成がしやすいです。
なぜなら、満室に近い物件であるほど銀行内でその物件の評価が高くなるからです。(全部空いている物件の場合、買う側から考えても「何かあるのではないか?」と考えてしまいますよね。)
健美家の場合、個別の物件の欄に空室等の情報が掲載されています。
上の図において、現況という表示がある所が現在の空室状況を示しています。これは2つの括りしかないため、空室率の確認をする際には注意するようにしましょう。その分類は以下の通りです。つまり、空室率90%でも0%でも賃貸中という記載になる点に注意しましょう。
記載 | 実態 |
空室 | 入居率0% |
賃貸中 | 入居率1%~99% |
このように、空室の状況についてはポータルサイト上でも明確に記載されていないことが多いですが、情報を掲載する仲介会社にとっても満室という情報は有力なアピールポイントとなりますので物件情報の欄に記載されていることが多いです。
例えば、今回の検索結果の上から4番目の物件はタイトル部分に「満室」の情報が記載されています。
今回の検索の結果、融資が付きそうな物件を無事に絞りこむことができました。
候補となる物件が見つかったら、更に詳細な検討を進めていきましょう。詳細な検討の進め方に関しては別途コラムで紹介させて頂きます。
6. 借入条件を緩めて再度検討する
今回ご紹介させて頂いた借入条件は入居率0%という極めて厳しい条件における融資組成条件になりますので、物件の検討を進めていく中で有益な情報などが集まってきた際には少しずつ条件を緩めて検討を進めていくと良いのではないかと思います。
具体的な方法は、空室率を少しずつ下げていき、そこから得られる家賃収入を余剰資金に加えるという方法です。
この方法により、検討の範囲を少しずつ広げていくことができるようになります。
また、この方法で検討を進めることにより、常に自分の軸足(議論のスタート地点)を定めた上で検討を進めることができるというメリットがあり、銀行に対しても説得を持って交渉をすることができるようになります。
金融期間への説明の流れの例を以下簡単に記載させて頂きます。
- 空室率100%の場合でも返済することができる融資額は2,000万円
- 一方、今回検討している物件は駅徒歩5分であり、過去の入居率は90%を超えている
- そんな中でも、更に負荷をかけ、入居率50%で計算
- 入居率50%であっても、借入3,000万円であれば十分返済可能
- 上記にて、3,000万円の融資をお願いしたい
自分の余剰資金から返済できる金額、すなわち金融機関にとってもほとんどリスクゼロの前提から議論を始めることができるという点がメリットです。
7. 最後に
今回ご紹介させて頂いた方法は、自分の中の軸足を定めるという観点での検討方法であり、実際は法定耐用年数以上の期間で融資をする金融機関なども多数あるため、あくまでも参考程度に考えて頂ければと思います。
一方、今回ご紹介させて頂いた数字を頭に入れておくことによって金融機関との交渉の軸足を作ることができると同時に、漠然と物件を探す場合と比べて物件情報が頭に残りやすくなります。
また、物件を買い増していく上でもリスクを定量評価しながら検討を進めることは極めて重要です。
急な事業拡大を目指すだけでなく、地に足を付けた検討も合わせて進めていくようにしましょう。