不動産を購入するタイミングで土地と建物の按分をどうするかという質問を仲介会社などから受ける場合があります。
不動産の売買自体あまり経験することがありませんので、按分の方法を仲介会社にまかせっきりになりがちです。
他方、土地と建物の按分方法は不動産経営において大きな意味をもっており、具体的な按分方法を知っているだけで交渉を有利に進めることができるようになります。
そこで今回は、土地と建物を按分する具体的な方法3種類について紹介させていただきます。
- 目次
- 1. 土地と建物に按分するとは?
- 2. 土地と建物の按分方法を紹介
- 2-1. 契約書に記載されている価格で分ける
- 2-2. 固定資産税評価額に基づいて分ける
- 2-3. 不動産鑑定士の評価に基づいて分ける
- 3. 最後に
1. 土地と建物に按分するとは?
土地と建物に按分するということがどういうことなのかという点についてまず簡単にお伝えさせていただきます。
土地と建物に按分するというのは、不動産の売買契約書に記載する土地と建物の金額を決定するということです。
なぜ按分する必要があるのかという点に関しては減価償却と消費税の2つの背景を知っておく必要があります。
一言でお伝えさせていただくと、減価償却費を計上できるのも消費税を納付する義務が発生するのも建物部分だけだからです。
この点はしっかりと認識しておくようにしましょう。
2. 土地と建物の按分方法を紹介
ここから具体的に土地を建物を按分する方法についてご紹介させていただきます。
大きく分けて3つの方法がありますので、それぞれの方法について1つずつご紹介させていただきます。
2-1. 契約書に記載されている価格で分ける
まずは、契約書に記載されている価格で分ける方法があります。
不動産の売買契約書には基本的に建物価格と土地価格が記載されています。以下の図をご参照下さい。
上記は不動産保証協会作成のひな形に基づく売買契約書ですが、売買代金の内訳として土地代金と建物代金に分けられているのがお分かりになると思います。
減価償却の対象とする建物の価格も、この契約書に記載されている価格にするというものです。
ただし、一点だけ注意する点があります。それは、当事者で合意すればどのような按分でも良いのかという点です。
民法(人と人の契約)は契約自由の原則をうたっており、基本的に当事者間でどのような金額を設定しても良いのですが、税金を徴収する国税庁の立場からすると、基本的にはその計算方法に根拠が必要となります。
すなわち、あまりにも合理性を欠く按分方法である場合、後々国税庁から指摘を受ける(按分方法が否認される)可能性もありますので、注意しましょう。
2-2. 固定資産税評価額に基づいて分ける
また、固定資産税評価額に基づいて按分することも可能です。
固定資産税評価額について詳しく知りたい方は、固定資産税評価額の計算方法をわかりやすく解説というコラムをご参照いただければと思います。
不動産の保有者は固定資産税を払う必要がありますが、固定資産税の支払は市町村が策定する固定資産税評価額に基づいて行われており、この固定資産税評価額は建物と土地を別々に評価しています。
固定資産税評価額にはもちろん計算根拠がありますので、合理的な按分方法となります。以下市町村から送付される固定資産税評価額の計算書をご参照下さい。
また、この方法は国税庁のタックスアンサーにも記載されている内容ですので、後々国税庁から指摘を受ける可能性もほとんどないと言えます。
タックスアンサー「建物と土地を一括譲渡した場合の建物代金は」コチラ
2-3. 不動産鑑定士の評価に基づいて分ける
更に、不動産鑑定士に建物と土地の按分の依頼をするという方法もあります。
この場合のメリットは、不動産のプロである不動産鑑定士に相談することで、固定資産税評価額に基づいた建物と土地の按分に比べ、建物の割合を大きくすることができる可能性があるということです。すなわち、高い節税効果を得ることができる可能性があります。
他方、鑑定評価書の作成は一般的に数十万円の費用がかかりますので、費用と節税効果のバランスを考えるようにしましょう。
また、建物価格は更に躯体部分と付属設備に分けることができるのですが、この分け方の根拠の設定においては、不動産鑑定士の方に作成いただく鑑定評価報告書が根拠となるでしょう。
3. 最後に
土地と建物の按分方法についてお伝えさせていただきました。
それぞれの按分方法をしっかりと理解し、有利な条件で不動産の購入・売却を進めることができるようにしましょう。