IRRは不動産投資において非常に重要な指標の一つですが、定義は「NPVがゼロになる割引率」と非常に分かりづらいですよね。
しかし、IRRはイメージさえつかめれば簡単な投資指標であり、投資の効率性を判断する上でIRRを考慮することは非常に重要です。
そこで今回は、IRRについてのイメージを持って頂くため、具体例と共にIRRについて説明させて頂きます。IRRのイメージをしっかりとつかみましょう。
- 目次
- 1. IRRとは?
- 2. IRRを分かりやすく言い換えると
- 3. IRR計算の具体例1
- 3-1. 銀行に預金
- 3-2. 不動産を購入
- 3-3. 2つの例の比較
- 4. IRR計算の具体例2
- 4-1. 銀行に預金
- 4-2. 不動産を購入
- 5. 割引率を理解する
- 5-1. 割引率の具体例
- 6. IRRを理解する
- 7. IRRが高いということが意味すること
- 8. 最後に
1. IRRとは?
IRRとはInternal rate of returnの略語であり、日本語では内部収益率と言います。そして、その定義は「正味現在価値(NPV)がゼロとなる割引率」とされています。
この定義からIRRを理解することは非常に難しいですので、この定義は一旦置いておき、具体例やイメージと共にIRRを理解していき、最後に改めてその定義からIRRを理解していきましょう。
2. IRRを分かりやすく言い換えると
IRRの定義は「NPV(正味現在価値)がゼロになる割引率」ですが、これでは意味が分からないと思いますので、ここからはまず違う言葉でIRRを表現し、IRRのイメージを深めていただければと思います。
IRRとは、簡単に言うと「金利」のことです。投資金=預金と考えると同時に、投資回収金=償還と考え、預金と償還の金額から金利を計算することがIRRを計算するということなのです。
といっても、この表現でもイメージが湧きづらいと思いますので、具体例と共に考えていきましょう。
この時、IRRは上記の定義ですので、割引率=金利=IRRというイメージを頭の片隅に置いて頂ければと思います。
3. IRR計算の具体例1
ここからIRR計算の具体例について紹介させて頂きます。
ここに現金があり、この現金を①銀行に預金するか、②不動産を購入するか、どちらの資産運用を行うべきかという観点から説明させて頂きます。
3-1. 銀行に預金
まず、銀行に預金する場合を考えてみましょう。以下の条件でお金を銀行に預けたとします。
- 預金期間は1年間
- 預金金額は100万円
- 金利は10%
以下簡単に図にしてみましたのでご参照頂ければと思います。
この場合、1年後に手元に残ってくるお金は100万円 x 110% = 110万円になりますね。預金した100万円に対して10万円の利息が発生しているからです。
3-2. 不動産を購入
次に、投資商品として不動産を購入した場合を考えてみましょう。以下の条件で不動産を購入するとします。(簡便化のため、税金などは一切考慮しないものとします。)
- 購入価格は100万円
- 保有期間は1年間
- 売却価格は110万円
以下簡単に図にしてみましたのでご参照頂ければと思います。
この場合、1年後に手元に残る金額は売却価格である110万円です。
3-3. 2つの例の比較
ここで上記の2つの例を比較してみましょう。片方は銀行への預金、もう片方は不動産の購入及び売却とお金の使い方は異なっていますが、当初持っていた現金と1年後に持っている現金の額は全く同じですね。
そして、上記3-2.の例の場合、IRRは10%となるのです。不動産を購入・売却したとしても、行っていることは利率10%で銀行に100万円を1年間預けていることに他ならないからです。
なぜ不動産投資を行った場合でIRRが10%になるのかという点の詳しい解説は本コラムの下段で紹介させて頂きますが、現時点では金利とIRRが同じようなものというイメージを持って頂ければと思います。
次に、条件を少し複雑にして考えてみましょう。
4. IRR計算の具体例2
ここからはもう少し複雑になった例で考えていこうと思います。
4-1. 銀行に預金
まずは銀行に預金した場合です。以下の条件で定期預金を組んだとします。
- 0年目に100万円を預金
- 金利は10%
- 2年目に満期となる
この場合の各年の現金の推移を示すと以下のようになります。
結果としては、3年目には121万円が残るという形になります。
4-2. 不動産を購入
次に、不動産を購入した場合について考えます。以下の条件で不動産を購入したとします。
- 0年目に100万円で購入
- 2年目に121万円で売却
上記の例でも、銀行に預金した場合と不動産を購入の場合で手元に残るお金は同じく121万円です。
4-3. 2つの例の比較
結果を見て頂くと、3.の場合における例と同様に最終的に手元に残った現金はどちらの場合でも同額です。
そして、上記4-2.の例におけるIRRは10%となります。
なぜなら、IRRが金利のようなものと考えた場合、1年目に100万円で不動産を購入して3年目に121万円で売却するということは、1年目に100万円を金利10%で預金して3年目に償還することに他ならないからです。
IRRと金利の相関関係のイメージを何となく持って頂いた上で、IRRの詳細に移っていきましょう。
5. 割引率を理解する
ここから少しずつIRRの概念に近づいていきます。
IRRの概念をしっかりと理解するためには、割引率という言葉を理解することが必要です。
なぜなら、IRRは「NPVがゼロになる割引率」が定義であり、そもそもIRRとは割引率のことを示しているからです。
(IRR=割引率=金利と言い換えることもできます。)
5-1. 割引率の具体例
割引率を理解するため、身近な例を考えてみましょう。
あなたはお得意様と商売をしており、121万円の商品を売った後、2年後に銀行から121万円が振り込まれるとします。
ただ、1年後にあなたはどうしてもお金が必要になり、銀行に対し、121万円をすぐに払って欲しいと依頼しました。
この時、銀行はいくらあなたに払うべきなのでしょうか?
銀行としては、もう1年猶予があったにも関わらず、1年前倒しでお金を払わされる訳ですから、その1年分の利益(すなわち、110万円を1年間運用した際に得られた利益)を差し引いた額をあなたに払うはずです。
ここでの割引率は、銀行における金利に他なりません。銀行にとっては110万円を1年間預けてくれるのであれば10%の金利を付けるということは、1年後の現金を今払わされる場合において10%で割り引くということなのです。
言い換えると、今あるお金の方が将来もらえるお金よりも価値があるということができます。
今100万円貰える場合と、1年後に100万円貰える権利があれば、前者を選択することは明らかですね。普段の生活においてあまり意識していないのですが、人はみな将来の価値を現在の価値に置き換える時、その価値を割り引いて考えているのです。
だからこそ、将来得られるお金を現時点で評価する場合においては、将来の価値を現在の価値に割引いて考える必要があるのです。
割引率の計算は画一的ではないため少しややこしいのですが、イメージとしては上の例で紹介させて頂いた、銀行から満期前に定期預金を解約する場合を考えれば良いでしょう。
定期預金の金利が10%の時、1年前倒しで定期預金を解約すると10%割り引かれた金額があなたの口座に戻ってくるというイメージです。
すなわち、割引率とは金利なのです。
6. IRRを理解する
上記4-2.で紹介させて頂いた例をもとに、IRRを実際に計算し、IRRの理解を深めましょう。
上記4-2.の場合における事例を再度紹介させて頂きます。
0年目 | 1年目 | 2年目 | |
購入 | 100万円 | ||
売却 | 121万円 |
IRRの定義に戻りましょう。IRRとはNPVがゼロとなる割引率です。NPVとは支出と収入の現在価値の合計です。
そして、現在価値とは将来のお金を割引いて考えた金額のことを言います。定期預金の例では、1年後に121万円入金予定の定期預金の現在価値(早期解約した場合の価値)である110万円が現在価値となります。
つまり、上記4-2.の例においては、0年目に発生した100万円の支出を割引いた金額と、2年目に発生した121万円の収入を割引いた金額の合計がゼロとなる割引率こそがIRRになるのです。
ちなみに、この割引率は支出の場合についても同じように考えることができます。つまり、2年後の121円の支出の現在価値は100万円となります(割引率10%の場合)。
これも銀行の例が分かりやすいと思います。2年後に払う予定だった100万円をすぐに払えば、銀行はその100万円を運用して利益を上げることができることから、その利益分を踏まえ、(すぐに払うのであれば)支払額を減らすことができるのです。
具体的な計算に戻りましょう。
上記の例では、以下のような計算になります(割引率10%にて計算)。
支出の現在価値:100万円 x 100/(1.1)0=100万円
収入の現在価値:121万円 x 100/(1.1)2=100万円
この関係を図で示すと以下のようになります。
支出の現在価値と収入の現在価値の合計が0円となりました。つまり、割引率が10%の時、NPVが0となりました。
これがIRR10%ということに他なりません。
割引率5%として考える
次に、割引率が5%とした上で、以下のようなスケジュールで投資を実行した場合どうなるのかという点について考えていきましょう。
0年目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | |
支出 | 0万円 | -100万円 | 0万円 | 0万円 |
収入 | 0万円 | 0万円 | 0万円 | 121万円 |
1年目の100万円の支出を割り引いた(1年)金額は、100 / 1.05 = 95.2万円です。
3年目の121万円の収入を割り引いた(3年)金額は、121 / 1.053=105.4万円です。
これを図で表すと以下のようになります。
つまり、この例において、NPVがゼロになる割引率は5%ではないため、IRRは5%ではないのです。
ちなみにですが、この例の場合、IRRは10%となります。すなわち、10%の割引率で支出と収入の現在価値を足すとゼロとなります。
7. IRRが高いということが意味すること
最後に、IRRが高いことが何を意味するのかという点についてお伝えさせて頂こうと思います。この項目はIRR自体の理解とは関係ありませんので、IRRを少し突っ込んで理解したい方向けの記載となります。
これも具体例で考えていきましょう。以下3パターンのような投資案件があったとします。マイナスが支出、プラスが収入を示しています。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | 合計 | IRR | |
案件1 | -5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 14 | 9 | 18% |
案件2 | -10 | 0 | 0 | 15 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 18% |
案件3 | -15 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 12 | 18% |
上記の表を比較して頂くと、現金の増加額は案件3が一番大きいですが、IRRは全案件で同じです。
つまり、IRRは時間の概念が含まれることから、早期に投資額を回収することができる案件=IRRが高い案件ということができるのです。
早期に投資額を回収することができれば、その回収した資金を再度投資に回すことができます。だからこそ、IRRは投資の効率性を測る指標として使われるのです。
8. 最後に
イメージと具体例で説明させて頂きましたが、このコラムで少しでもIRRについて対する理解が深まれば幸いです。
なお、不動産投資においても、IRRは重要な投資指標の一つです。
不動産案件のIRRがどれぐらいになるのかというイメージを掴みたい方は、是非とも以下のページから無料の収支計算ソフトをダウンロードしてください。
IRRに対する理解が深まることをお約束します。
IRRは金利であり、投資の効率性を測る指標です。不動産投資を含め、投資案件の精査において有効に活用するようにしましょう。