「非公開物件だからすぐに検討しないとなくなってしまいます」
不動産投資を始めて様々な会社の会員登録をした方の中にはこういった営業を受けた方も多いのではないでしょうか?
「表に出ていない物件だから希少価値がある物件に違いない。」
このように考える方も多くいらっしゃると思いますが、本当に非公開物件は価値があるのでしょうか?
非公開物件の本当の価値の見定め方をお伝えさせていただきます。
- 目次
- 1. 非公開物件とは?
- 2. 非公開にできる理由
- 2-1. 一般媒介だから
- 2-2. 媒介契約直後だから
- 2-3. 意図的にREINSに掲載していないから
- 2-4. 売主が非公開にして欲しいという意向があるから
- 3. 非公開にする理由
- 3-1. 物件にプレミアム感を出すため
- 3-2. 買手を自分で見つけるため
- 3-3. フルローンを組成するため
- 4. 未公開物件は本当に得なのか?
- 4-1. 不動産業者が本当に優良な物件を仕込んだ場合
- 4-2. 不動産業者が劣悪な物件を売り込もうとしている場合
- 5. 最後に
1. 非公開物件とは?
まず、非公開物件とはどういった物件なのかという点について説明させていただきます。
非公開物件とは、その名の通り、市場に公開されていない物件のことをいいます。
そして、「市場に公開されていない物件」とは一般的にはREINSに掲載されていない情報のことを意味します。
REINSとは、不動産業者だけが活用することができる不動産ポータルサイト(Suumoの業者版)と考えていただければ良いです。
2. 非公開にできる理由
次に、なぜ物件を非公開にすることができるのかという点について簡単に説明させていただきます。
2-1. 一般媒介だから
まずは媒介契約の種類が一般媒介契約だから、という理由があげられます。
ここで、簡単に媒介契約と市場への公開義務の関係について説明させていただきます。
物件の売主が仲介会社と契約を結んだ際は媒介契約の種類によってREINSへの掲載義務が発生します。
詳しくは不動産売却時の媒介契約形態を一般媒介にする5つのメリットというコラムを参照していただければと思いますが、3種類ある媒介契約の中で専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合にREINSへの登録義務が発生します。
逆の考え方をすると、一般媒介契約を締結した場合、仲介会社はREINSへの掲載義務がありません。REINSに掲載されない以上市場にその情報が流通することはありませんので、その物件は非公開物件となります。
2-2. 媒介契約直後だから
上述の通り専任媒介契約又は専属専任媒介契約の場合はREINSに情報を掲載する必要がありますが、その場合でも媒介契約締結からREINSに情報を掲載するまでの間は非公開物件になります。
媒介契約締結からREINSに掲載するまでの期間は、専任媒介契約の場合は7日、専属専任媒介契約の場合は5日です。
この間に仲介会社が買手を見つけた場合、問題がなくなります。
2-3. 意図的にREINSに掲載していないから
これは完全な法律違反なのですが、現実には仲介会社が意図的に物件をREINSに掲載しないこともあります。
REINSに掲載しない理由は買手を抱え込んで手数料を2倍貰うためということが背景です。
2-4. 売主が非公開にして欲しいという意向があるから
これはまれなケースなのですが、売主が物件を非公開にして欲しいといった場合もその情報が非公開となります。
なぜ売主が非公開にしたい理由は様々なのですが、基本的には売主に金銭的な余裕があり、物件の売り情報を市場に出したくないという点が背景として挙げられます。
こういった背景で非公開になっている物件は市場価格とくらべて物件価格が低くなる可能性が高いと考えることができます。
3. 非公開にする理由
上記で紹介させていただいた理由を元に、物件を非公開にする理由について考えていきましょう。ここでは大きく分けて3つの理由が考えられますので、順番に紹介させていただきます。
3-1. 物件にプレミアム感を出すため
まずは物件にプレミアム感を出すために非公開にするということが考えられます。
買手の立場から見ると、市場に出ていない情報を紹介して貰ったという理由からその物件に対してプレミアム感を感じてしまい、物件の本当の価値以上の価値があると考えてしまいがちです。
売手の立場からすると、このプレミアム感を上手に演出して物件を売ろうと考えます。この場合、業者はプレミアム感を出すために媒介契約直後に物件を見込み客に紹介したり、売主と媒介契約を締結する際、高値で売ることを条件の市場に出さないことを約束したりします。
3-2. 買手を自分で見つけるため
次に、買手を自分で見つけるためという理由が考えられます。これは仲介会社にとってメリットがある話です。
不動産仲介業は、売手と買手双方を自社で見つけることができると、両者から手数料を貰うことができます。つまり、仲介会社は基本的には買手を自分で見つけようと考えます。
上記2-2.で記載させていただいた通り、専任媒介契約または専属専任媒介契約の場合でもREINSへの登録期間にはある程度の猶予があることから、この猶予期間中に非公開物件として買付を取り付けるのです。
3-3. フルローンを組成するため
3つ目の理由がフルローンを組成するためです。これは若干グレーな手法であり、詳細な説明は控えさせていただきますが、市場に公開されている物件でフルローンを組成することは簡単ではありません。
投資にあたって自己資金の拠出はできるだけ減らしたいと考える投資家の方は極めて多いですので、そういった方にとっては非公開物件というのは非常に有力な選択肢となります。
4. 非公開物件は本当に得なのか?
上記の検討踏まえ、非公開物件が本当に得なのかという点についてお伝えさせていただきます。
結論としては、得になる場合もあれば得にならない場合もある。ということが結論になります。ここからその理由について説明させていただきます。
4-1. 不動産業者が本当に優良な物件を仕込んだ場合
まずは、不動産業者が本当に優良な物件を仕入れることができた場合です。
本当に優秀な不動産会社は、営業力が高く、物件を安い値段で仕入れる能力に長けています。
そして、そういった有力な不動産会社が自社で物件を購入した場合、もしくは相対的に値段が安い物件の売主と媒介契約を締結した場合、すぐに自社が抱えている顧客に対してその情報を流します。
媒介契約後はREINSの登録まである程度の猶予期間が与えられているので、その間に自社が抱えている顧客に物件を紹介するのです。
そうすることによって自社が買手を見つけ、両手の手数料が入ると同時に、物件の売手は早急に買手が見つかり、買手は市場よりも安く物件を売ることができ、みんながハッピーになるという構図です。
4-2. 不動産業者が劣悪な物件を売り込もうとしている場合
次に、業者が劣悪な物件を売ろうとしている場合が考えられます。劣悪な物件を売る場合、仲介会社はとにかくプレミアム感を演出して物件を売ろうとしてきますので、非公開物件ということを全面に押し出して物件を売ってきます。
そして、売主から高値で売却するという約束を取り付けている不動産業者は、無理にフルローンを組成し、物件価格を釣り上げ、買手と売手から高い仲介手数料を取ろうとするのです。
5. 最後に
非公開物件であっても、結局は物件をしっかりと見極める目がなければ判断することができません。非公開物件だからといってむやみに飛びつくのではなく、しっかりとした軸を持って一つ一つの物件を判断していくようにしましょう。
なお、不動産ポータルサイトから良い物件かどうか絞り込む方法を知りたい方は、収益物件の現地確認前にチェックしておきたい9のポイントというコラムをご参照いただければと思います。