旭化成建材の問題で顕在化した基礎杭問題。
これから不動産を購入しようという方も、本当に基礎や家の躯体が大丈夫なのか不安な方もいらっしゃるのではないかと思います。
そんな不安を払拭するような保険があることをご存じでしょうか?
その保険は、住宅瑕疵保険というもので、この保険に加入できる建物は基礎にも問題がないことが証明されています。
そこで今回は、この住宅瑕疵保険の内容について説明させて頂きます。
- 目次
- 1. 住宅瑕疵保険とは?
- 1-1. 既存住宅瑕疵保険の内容
- 2. 既存住宅瑕疵保険で担保される瑕疵とは?
- 2-1. 具体的な瑕疵の対象
- 2-2. 傾きは瑕疵になるのか?
- 3. 保証の内容は?
- 3-1. 保証の期間
- 3-2. 保証の金額
- 4. 費用は?
- 4-1. 検査費用
- 4-2. 保険費用
- 5. 保険付保までの流れ
- 6. 注意するべきポイント
- 7. 住宅瑕疵保険の活用方法
- 7-1. 物件売却前に検査を行い、瑕疵担保保険に加入することができることをアピールする
- 7-2. 将来の不測の事態に備える
- 8. 最後に
1. 住宅瑕疵保険とは?
住宅瑕疵保険とは、住宅に瑕疵が発生して保険金支払い請求を行った際に既に事業者が倒産していた場合や、事業者が保険金を支払うことができない場合に保険会社が事業者に代わって保険金を支払うものです。
以下に簡単な図を作成しましたので参照頂ければと思います。
なお、新築住宅の場合、特定住宅瑕疵担保責任の確保等に関する法律により、新築住宅を引き渡す建設業者及び宅建業者は、保険または供託による資力確保措置が義務付けられています。
つまり、新築の場合は買主は必ず保険により保護されていることになりますので、特段問題は生じません。(新築の場合、保険期間は10年間です。)
一方、中古住宅の場合は法律上の資力確保措置は強制ではありません。しかし、不動産の売買では現状有り姿での売買を行い、瑕疵担保責任は追及しないという条件で契約を行うことも多く、買主にとっては取引に際して対象不動産に瑕疵がないか不安です。
そこで、既存の住宅に関しても円滑に売買を進めるため、既存住宅瑕疵保険という商品があるのです。
1-1. 既存住宅瑕疵保険の内容
既存住宅瑕疵保険は既に人の居住に供されている住宅もしくは建築後1年~2年(保険会社によって期間が異なります)を経過している住宅に対して適用されます。
保険の内容は新築住宅の場合と同じですが、保険金額や保険料、保険期間などが新築住宅と異なりますので、それらの点について説明させて頂きます。
2. 既存住宅瑕疵保険で担保される瑕疵とは?
まずは既存住宅瑕疵保険で担保される瑕疵について見ていきましょう。
大きな枠組みとしては、住宅の品質確保の促進等に関する法律に定められた構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分に関する瑕疵が保険によって担保されます。
出典:住宅瑕疵担保責任共同組合
2-1. 具体的な瑕疵の対象
構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分の更に細かい定義は住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成12年政令第64号)第5条に規定されており、以下の通りです。
構造耐力上主要な部分
- 住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他 これらに類するものをいいます。)、床版、屋根版または横架材(はり、けたその他これら に類するものをいいます。)で、当該住宅の自重もしくは積載荷重、積雪、風圧、土圧もし くは水圧また地震その他の震動もしくは衝撃を支えるもの
雨水の浸入を防止する部分
- 住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
- 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根もしくは外壁の内部ま たは屋内にある部分
2-2. 傾きは瑕疵になるのか?
三井住友建材が販売したマンションの基礎杭が浅かったためにマンションが傾くという問題が発生していますが、傾きは瑕疵の対象になるのでしょうか?
実は法律上、傾きは瑕疵になると明記されているわけではありません。しかし、「住宅紛争処理の参考となるべき技術基準」によると以下のような整理がされています。
- 0.3%未満の傾斜:「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」
- 0.3%以上0.6%未満の傾斜:「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する」
- 0.6%以上の傾斜:「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」
0.3%の傾斜とは、10mの距離で3cmの高低差があることです。少なくともビー玉は容易に転がるようなレベルです。
つまり、明確な答えがあるわけではないですが、一般的な常識に照らせば傾斜は瑕疵とみなすことができるでしょう。ただし、実際に保険請求をした場合に瑕疵に該当するかどうかは保険会社の判断になりますので個別の対応が必要です。
3. 保証の内容は?
次に具体的な保証の内容について見ていきましょう。以下保証内容は全て既存住宅の場合を前提としております。
3-1. 保証の期間
保証の期間は最大で5年です。基本的には1年または2年契約か5年契約かを選択する場合が多いです。
また、1回の保険期間は最大5年ですが、保険期間終了後に改めて検査を行うことによって保険を付保することができます。
火災保険などは保険期間が最大で10年となりましたが、10年後に改めて保険をかけることができることと同じです。
3-2. 保証の金額
保証の金額は最大で1,000万円です。保険期間が1年又は2年の場合は保証額が500万円になることがあります。
4. 費用は?
次に費用について見ていきましょう。費用は大きく分けて検査費用と保険料の2つに分かれます。
4-1. 検査費用
まずは住宅瑕疵保険を付保することができるかを確認するための検査を行う必要があり、検査料が発生します。
検査料は概ね2.5万円から3.5万円の間です。
4-2. 保険料
保険期間5年、保険料1,000万円を前提とすると、保険料は概ね1m2あたり5,000~6,000円です。
5. 保険付保の流れ
次に保険付保の流れについて見ていきます。
保険を付保するためにはまず対象住宅の検査を行う必要がありますので、保険会社に対して検査の要求を行います。
検査の要求を受けた保険会社は、実際に現場を確認し、保険を付保することができる建物かどうかの確認を行います。
そして、確認が取れた場合は保険料を支払い、保険証券を受け取ることによって保険の付保開始となります。
住宅瑕疵保険を扱っている保険会社
6. 注意するべきポイント
住宅瑕疵保険への加入においては気を付けるべきポイントがあります。
それは、保険金を支払わない事由に「住宅事業者またはそれらの者と雇用契約のある者」の故意または重大な過失により生じた損害については保険金が支払われないということです。
例えば、話題になっている基礎杭問題において、施工業者である旭化成建材が故意でデータ改ざんを行った場合、保険金が支払われない可能性が高いのです。
この問題に対しては、特約を付保することにより、故意または重大な過失により生じた損害についても保証の範囲内にすることができますので、保険の加入においてはこの特約を含めることを忘れないようにしましょう。
また、特約とせず、標準の契約として故意、過失による損害を担保することができる場合もありますので、それぞれの保険会社に問い合わせを行うようにしましょう。
7. 住宅瑕疵保険の活用方法
最後に住宅瑕疵保険の具体的な活用方法について説明させて頂きます。
7-1. 物件売却前に検査を行い、瑕疵担保保険に加入することができることをアピールする
今のタイミングで不動産の売却を検討する場合、買主は家の基礎部分について特に気にすることが想定されます。
そこで、保険会社経由で住宅の検査だけを行い、住宅の主要な部分の確認が完了している不動産であることをアピールすることができ、買主に対して安心感を与えることができます。
7-2. 将来の不測の事態に備える
保険の本来の目的は将来の不確実性に備えるということです。
住宅瑕疵保険も、その趣旨は不動産の隠れた損傷を修復するための費用を担保するものですから、いつ顕在化するか分からない瑕疵に備えて保険に加入するという選択肢は賃貸経営や生活の安定において重要な要素ということができるでしょう。
8. 最後に
住宅瑕疵保険の費用はそこまで高くはありませんので、積極的に利用の健闘をされることをお勧めします。
また、今後マンションを購入することを検討されている方は、この保険を活用して基礎の状態を確認しても良いかもしれません。