不動産売買においては仲介会社に対して仲介手数料を払うのが一般的です。
この手数料の金額は売主が法人か個人かなどの要因によって変わってきますが、あまり一般的には知られていません。
上記を含め、仲介手数料は知っておくだけで有利になるポイントがあります。そこで今回は、仲介手数料の計算方法と知っておくと得するポイントについて説明させていただきます。
目次
- 1. 仲介手数料とは?
- 1-1. 仲介手数料の上限は?
- 1-2. 仲介手数料が発生しない場合
- 1-2-1. ポータルサイトで売主物件かどうかを確認する方法
- 2. 仲介手数料の計算方法
- 2-1. 取引態様を確認する
- 2-2. 建物代金から消費税を引く(売主が法人の場合)
- 2-3. 仲介手数料の額を計算する
- 3. 実際の取引において知っておいた方が良いこと
- 3-1. 仲介手数料はどのタイミングで支払い必要があるのか?
- 3-1-1. 実務における仲介手数料支払いのタイミングは?
- 3-2. こんな場合でも仲介手数料は発生する?
- 3-2-1. 住宅ローンが通らなかった場合
- 3-2-2. 売主又は買主による債務不履行で契約が解除となった場合
- 3-2-3. 契約が無効である場合
- 3-3. 仲介手数料を値引くことはできるのか?
- 4. 最後に
1. 仲介手数料とは?
まず初めに仲介手数料とは何かという点についてご説明させていただきます。
仲介手数料とは、不動産の媒介をした場合に媒介をした不動産会社に支払う費用のことです。媒介=仲介と捉えていただいて問題ありませんので、もう少しかみくだくと、不動産の仲介をした不動産会社に支払う費用が仲介手数料です。
また、不動産の仲介で報酬を得ることができるのは宅地建物取引業の許可を受けている不動産会社だけですので、許可を受けていない会社が仲介手数料を受けとることはできません。以下に仲介手数料支払いのイメージを載せさせていただきましたので参考にしていただければと思います。
1-1. 仲介手数料の上限は?
次に、仲介手数料の金額が具体的にどれぐらいなのかという点についてお伝えさせていただきます。
宅建業法によると、仲介手数料は上限についてのみ規定されています。以下宅建業法46条の抜粋をご参照いただければと思います。
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
そして、宅地建物取引業者が受け取ることができる金額は以下に規定がありますので、参考にしていただければと思います。
国土交通省 宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受け取ることができる報酬の額
上記リンクに基づく報酬の限度額は以下の通りです。
売買金額 | 手数料の上限 |
200万円以下 | 5.40% |
200万円超、400万円以下 | 4.32%+2.16万円 |
400万円超 | 3.24%+6.48万円 |
仲介手数料は上記額が上限であり、0円であっても問題はありません。
1-2. 仲介手数料が発生しない場合
ここで、仲介手数料が発生しない場合について簡単に説明させていただきます。
仲介手数料が発生しない場合とは、不動産会社が仲介をしない場合、すなわち、不動産会社自身が売主である場合が挙げられます。
それぞれのパターンを簡単に整理させていただきましたので、以下の図を参考にしていただければと思います。
上記図の通り、売手と買手の間に仲介会社が入らない限り、仲介手数料は発生しません。
1-2-1. ポータルサイトで売主物件かどうかを確認する方法
ここで、具体的に売主物件かどうかを確認する方法についてお伝えさせていただきます。以下健美家の物件検索結果の画面をご覧ください。
上の図で青色部分の「取引態様」という部分をご覧下さい。ここが「売主」となっている場合は、不動産会社が売主になりますので仲介手数料は発生しません。
2. 仲介手数料の計算方法
どういった場合に仲介手数料が発生するのかという点を理解していただいた上で、次に仲介手数料の計算方法について説明させていただきます。
2-1. 取引態様を確認する
まずは、上述の通り、取引態様を確認しましょう。
「売主」であれば仲介手数料は発生しません。
2-2. 建物代金から消費税を引く(売主が法人の場合)
次に、建物代金から消費税分を引いていきましょう。なぜ建物代金から消費税分を引くのかと言うと、一般的にポータルサイトに記載されている不動産の価格は税込み価格なので、不動産の価格から消費税分を引かなければ、消費税が2重にかかってしまうからです。
ただし、建物価格に消費税が発生するのは売主が法人の場合だけです。売主が個人の場合、消費税は発生しないという点に注意しましょう。
そして、売主が法人か個人かという情報は一般的にポータルサイトには掲載されていませんので、仲介会社に直接問い合わせて確認するようにしましょう。
2-3. 仲介手数料の額を計算する
消費税を引いた金額を計算することができたら、仲介手数料の金額を実際に計算していきましょう。
計算方法は1-1.で紹介させていただいた表の通り、不動産価格に3%~5%をかけることによって計算します。改めて手数料の上限表を下記します。
売買金額 | 手数料の上限 |
200万円以下 | 5.40% |
200万円超、400万円以下 | 4.32%+2.16万円 |
400万円超 | 3.24%+6.48万円 |
また、以下に不動産の金額ごとの仲介手数料を示したグラフを載せさせていただきます。以下の図で仲介手数料のイメージを掴んでいただければと思います。
上記の図の通り、金額が安い不動産ほど、売買金額に対する仲介手数料の割合が大きい(グラフが急になる)ことがお分かりいただけるのではないかと思います。
3. 実際の取引において知っておいた方が良いこと
最後に、実際に不動産を購入して仲介手数料を支払う場面において知っておいた方が良いことをお伝えさせていただきます。
3-1. 仲介手数料はどのタイミングで支払う必要がるのか?
仲介手数料をどのタイミングで払うべきかというのは気になる点ですよね。仲介手数料の報酬について定めている宅建業法による報酬部分の規定は以下の通りです。
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
すなわち、仲介手数料の支払いタイミングに関する規定はないというのが現状です。
3-1-1. 実務における仲介手数料支払いのタイミングは?
では、実務においてどのタイミングで仲介手数料を払うのが一般的なのでしょうか?この点、実際の取引においては決済時点で仲介手数料を払うのが一般的です。
決済時点とは、売買契約の締結が完了し、融資の承認がおり、実際に不動産の引き渡しを行うタイミングのことです。以下簡単に不動産取引の流れと仲介手数料請求のタイミングについて図にさせていただきましたので、参考にしていただければと思います。
仲介会社によっては売買契約成立のタイミングで仲介手数料の一部を要求してくる場合がありますが、その場合はあくまで交渉ですから、仲介会社の信頼度などに応じて対応していくと良いでしょう。
3-2. こんな場合でも仲介手数料は発生する?
次に、契約が最終的に成立しなくても仲介手数料を払う必要がある場合についてお伝えさせていただきます。
この辺りの細かい規定は宅建業法にも書かれていませんので、裁判の判決をもとに考える必要があります。それぞれの場合で仲介手数料がどういった扱いになるのか見ていきましょう。
3-2-1. 住宅ローンが通らなかった場合
まず、住宅ローンの審査が取らなかった場合です。この場合、基本的には売主や買主に落ち度はないので仲介手数料が戻ってくるのが一般的な考え方です。
他方、民法における契約の解除とは、一度成立したものを取りやめるということであり、契約が成立したという事実は変わりませんので、この契約成立の事実に基づいて仲介手数料を請求してくる仲介会社がいるかもしれません。
上記トラブルを避けるためには、契約書内に、「融資の承認を得ることができなかった場合は、買主は契約を解除することができるものとし、その場合仲介手数料は発生しないものとする」といった文言を入れておくのが安全でしょう。
3-2-2. 売主又は買主による債務不履行で契約が解除となった場合
次に、売主又は買主に落ち度があることによって契約が解除となった場合です。この場合、契約は一度成立しており、仲介業者として「媒介」という業務が行われているということから、その役務に基づいて仲介会社は仲介手数料を請求することができるというのが一般的な考え方です。
他方、請求することができる仲介手数料の金額は法律上の上限ではなく、ある程度減額された額になることが一般的です。
3-2-3. 契約が無効である場合
最後に、契約が無効である場合についてです。無効とは「元々なかったこと」であり、解除とは法的性質が異なります。
元々なかったということは、契約は成立していないということですので、契約が成立していない以上、仲介手数料も発生しません。
契約が無効になる代表例としては、錯誤無効があげられます。錯誤無効とは、簡単に言うと「勘違いです。」
例えば、買主が「物件近くに新しい駅ができるからこの家を買う」といった場合、それは嘘と知っていながら売主が物件を売った場合、買主は「物件近くに新しい駅ができなければ家は買っていなかった」のですから、錯誤に基づいて契約の無効を主張することができるのです。
3-3. 仲介手数料を値引くことはできるのか?
また、仲介手数料は安い額ではありませんので、この手数料を値引くことができるのか気になる方もいらっしゃると思います。
この点の詳細に関しては、不動産売買で仲介手数料無料となる仕組みと注意するべきポイント5つというコラムをご参照いただければと思います。
上記コラムは仲介手数料無料の場合について紹介させていただいておりますが、根本的には仲介手数料を無料にする場合も割引する場合もその考え方は変わりません。
4. 最後に
不動産売買における仲介手数料の計算方法についてお伝えさせていただきました。
取引態様の確認や売主が法人か個人かの確認をしっかりと行い、必要以上に仲介手数料を払うことがないようにしましょう。