指値という言葉は不動産投資において一般的な言葉ですが、実際に指値をするとなると、具体的にどうやれば良いのか分からない。という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
100万円の指値に成功すれば、不動産購入時にあなたの手元に100万円が残ることになります。大きな金額が動く不動産の取引においては、指値をすることは非常に重要なポイントです。
そこで今回は、指値のやり方と、指値を成功させるためのポイントについてお伝えします。
- 目次
- 1. 指値とは?
- 2. 指値のやり方は?
- 3. 指値を成功させるための準備
- 3-1. その1 売主と繋がっている仲介業者を見つける
- 3-2. その2 売却理由をしっかりと把握する
- 3-3. その3 売主との関係を構築する
- 4. 指値のやり方について詳しく解説
- 4-1. 修繕費がかかるから
- 4-2. ローン特約を付けないから
- 4-3. 銀行の融資が●●万円しかつかないから
- 4-4. 譲歩案を提示するから
- 4-5. 気持ちに訴えかける
- 5. タイプ別、指値を成功させるポイント
- 5-1. 売主が売り急いでない場合
- 5-2. 売主が高齢者の場合
- 5-3. 売主が投資家の場合
- 5-4. 資産整理
- 6. 最後に
1. 指値とは?
まず、指値とは何かという点について簡単に説明します。
指値とは、売主の売却希望額に対し、それ以下の金額で購入の意思を表示することです。
指値は英語で「Price limit」と言います。直訳としては購入できる限度額、という意味になりますので、こちらのニュアンスの方が正しいかもしれません。
1,000万円の収益物件に対して900万円の指値をするということは、900万円以下であれば買います。という意思表示をすることになるのです。
2. 指値のやり方は?
次に、どうやって指値をすれば良いのかという点について説明します。
不動産購入の意思表示をするには、買付証明書という書類を仲介会社に提出する必要があります。
そして、この買付証明書に希望金額(指値)を記入すれば指値をすることができます。
不動産買付証明書について詳しく知りたい方は、不動産買付証明書の書き方を詳しく解説【ひな形付き】という記事をご覧ください。
3. 指値を成功させるための準備
ここから、実際に指値を成功させるために準備すべきことについてお伝えします。この準備をしないと、指値が通る可能性が低くなってしまいますので注意しましょう。
前提として知っておいていただきたいこととして、指値は買主と売主の力関係が基準となるということです。
不動産は相対取引ですから、売主の方が承諾しない限り、指値はききません。
つまり、指値が効くかという点については案件毎に検討する必要があるのです。
他方、人の気持ちというは変わるものであり、ずっと売れ残ってくると売主も弱気になってきますので、タイミング次第ではどの物件でも指値をすることは可能、とも言えるでしょう。
そして、指値を成功させるポイントを一言で言うと「売主の気持ち」にアプローチするということです。売主にしっかりと刺さりこむ形で指値をすることができれば、指値が通る可能性はおのずと高まるでしょう。
ここから、指値を成功させるための前提知識について理解しましょう。
3-1. その1 売主と繋がっている仲介会社を見つける
まず、売主と繋がっている仲介会社を見つけることが重要です。
不動産仲介では、買主側と売主側、それぞれに仲介会社が入ることが良くあります。以下の図をご覧ください。
不動産の売買においては、まず売主から売却の依頼を受けた仲介会社がいます。この会社は自社で買手を見つけることも、他の仲介会社に買手を見つけるよう依頼することもできます。
上記において、買手側仲介会社は売主と直接の繋がりがないので、売主がどういった背景で売却をしようとしているのか良く分かっていないことも多いです。
だからこそ、売主から売却の依頼を受けている仲介会社と繋がることが重要です。
3-2. その2 売却理由をしっかりと把握する
売主が収益物件を売却する理由はそれぞれ異なります。そのような中、しっかりと売却理由を確認することは指値の可能性を高める上で欠かせません。
なぜ売却理由を確認すると指値の可能性が高まるのかというと、背景をしっかりと知ることによって、売主によってメリットがある提案をしやすくなるからです。
売却理由とそれぞれの場合における指値のポイントは、4.以降で説明します。売却理由をしっかりと探ることが重要であることをしっかりと認識しておきましょう。
3-3. 売主との関係を構築する
そして、可能であれば売主と関係を築くようにしましょう。
売主との関係を構築すると言っても、仲介会社を飛び越えて直接売主と話しをしてはいけませんので、基本的には仲介会社経由で売主とコミュニケーションを取っていくことになります。
たとえば、仲介会社経由で感謝の気持ちを売主に伝えたり、手紙を仲介会社経由で渡してもらったりすることによって売主との距離を縮めることができるでしょう。
売主から見ると、同じ金額で買付を入れてきた人がいた場合、面識がある人、信頼できる人に売りたいと思うのが人情です。
売主の状況次第では、例え安く売ることになったとしても、親しい人に収益物件を売ることを決める場合があるということは認識しておくと良いでしょう。
4. 指値の理由を一つずつ解説
前提知識について学んだ後は、実際にどういった理由で指値をすれば良いのか学んでいきましょう。
4-1. 修繕費がかかるから
まずは、修繕費がかかるという理由です。ピカピカの状態で収益物件が売られることはほとんどありませんから、基本的にはほぼ全ての収益物件においてこの指値の方法は有効です。
しかし、修繕費がかかるという理由は、暗に「あなたの物件は汚いです」と言っているようなものですから、この方法で指値をすることによって相手の気持ちを害してしまう可能性があることも認識しておきましょう。
修繕費用として認識できる項目と、そのおおまかな金額について表にまとめましたので、参考にして下さい。
項目 | 費用 |
クロスの張り替え | 1,000円/m2 |
クッションフロアの張り替え | 3,000円/m2 |
エアコンの交換 | 10万円/台 |
洗面台の交換 | 8万円/台 |
*外壁の塗装 | 5,000円/m2 |
*屋上防水 | 4,000円/m2 |
外壁の塗装や屋上防水工事は、建物の状況によって値段が大きく変動します(足場の設置費用などが発生する可能性があるためです)。
4-2. ローン特約を付けないから
現実的にはこの方法が最も指値がきく可能性が高いかもしれません。
「ローン特約」とは、ローンが通ることを前提に物件を買う。という意思表示をするものです。
そして、ローン特約がついている場合、例え契約を締結したとしても、ローンが付かなかったら契約がなくなってしまいます。
一度結んだ契約を再度結び直すということは、売主にとっても手間ですよね。
だからこそ、ローン特約がない契約は売主にとっても魅力的に映るのです。
4-3. 銀行の融資が●●万円しかつかないから
次は、銀行の評価額に上限があることを理由に指値をするという方法です。
買主の物理的な制約を伝えることができますので、売主の方によっては「しょうがないか」と納得してくれる場合もあります。
しかし、売主にとってみれば「買主の融資状況など関係ない」、と突っぱねられる場合もありますので注意が必要です。
他方、銀行の評価額を伝えても、それが買主の属性に起因したものと説明すれば売主の気分を害することもありません。
買主の属性を考えると●●万円が限界です。という理由と共に、銀行の評価額を伝えるのも有効な戦略と言えるでしょう。
4-4. 相手に譲歩案を提示するから
指値に応じてくれる条件として、こちらから逆に見返りの提案をするという方法も有効です。
買主側から提示することができる条件としては、以下のような項目がありますので、参考にして下さい。
- 引き続き管理や清掃を依頼するから
- 手付金を増やすから
- 引渡し日を前倒しにするから
- 瑕疵担保を免責にするから
- 面倒な手続きをこちらで全てやるから
4-5. 気持ちに訴えかける
また、気持ちに訴えかけて指値をするという方法もあります。気持ちに訴えかける具体的な方法を下記しますので、参考にして下さい。
- 保有後、売らずにずっと保有しているから
- 売主の意向に沿った形で賃貸経営するから
5. 売主のタイプ別、指値のやり方について細かく解説
ここから、売主のタイプ別にどういった形で指値を進めれば良いのかお伝えします。
上記指値パターンと組み合わせて活用して下さい。
5-1. 本業の経営状況が悪化しているので、早急に売却をしたい
まずは、本業の経営状況が悪化しているので早急に収益物件を売却したいという理由が挙げられます。
この場合、売主は運転資金を早急に確保したいため、売却の「価格」よりも「スピード」がポイントになります。
このような状況の場合、現金で不動産を購入することができれば非常に有利になります。すなわち、ローン特約を付けないからという理由で買付を入れれば、買付が通る可能性が高まると言えるでしょう。
5-2. 相続にそなえ、現金化しておきたい
次に、相続の前に不動産を売却して現金化しておきたいという理由が挙げられます。
相続を受けた人は相続税を払う必要がありますが、その納付期限は相続してから10か月とあまり長くありません。
相続は複数人が関わることが多いですので、分割をすることができない不動産よりも、分割できる現金にした方が後々もめなくて済む可能性が高まるのです。
また、相続はトラブルが発生することも多いため、実際に相続が発生する前に現金化しておきたいと考える方もいらっしゃいます。
この場合、売主の方はお金に困っていない場合が多いですので、戦略としては売主の方の気持ちに訴えかけるという方法が良いでしょう。
また、収益物件に対する知識があまりない方の場合は、銀行の評価額を引き合いに出すのも説得力がある指値方法です。
5-3. 管理が面倒くさくなったので売りたい
これも売主の方が高齢の場合に見られる売却理由です。
管理会社に管理業を任せていればオーナーとしての手間はそこまで発生しないのですが、すでに十分なお金を持っている場合、不動産の管理をすることが面倒くさくなってしまい、売却するということが考えられます。
この場合は物件に対する愛着がない場合が多いですので、物件を理由に指値をしても受け入れて貰えない可能性が高いです。
ここで取れる戦略は、売主の方と会う機会を作って信頼関係を築くことです。物件ではなく、売主と関係を築くことによって指値が成功する可能性を高めることができるでしょう。
5-4. 資産整理
実際の購入場面で一番多く聞く理由がこの「資産整理」という理由だと思います。
言葉としてはもっともらしいですが、実際のところ「資産整理」という理由はあいまいな言葉であり、この理由では指値の戦略を立てることができません。
そういった意味では、資産整理という理由の場合はとにかく複数の指値を組み合わせながら、売主の情報を少しずつ集めていくという方法が王道になるでしょう。
6. 最後に
指値の概要と、指値を成功させるためのポイントについてお伝えしました。
指値が成功した後は、買付を入れることになります。買付証明書について詳しく知りたい方は、不動産買付証明書の書き方を詳しく解説【ひな形付き】という記事を参考にして下さい。