これから不動産を売却しようと考えており、仲介会社と媒介契約を結ぼうと考えているが、どういった契約形態があるのかよく分からない。
契約形態は何となくわかるが、どの契約形態にすればよいのか良く分からない。
このような疑問を持たれるかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
多額の資金が動くからこそ、媒介契約の形態もしっかり検討して上で選びたいものですよね。
私は高値で売却するためには一般媒介契約が極めて有効と考えていますが、その理由を媒介契約の種類と共にご紹介させて頂きます。
- 目次
- 1. 媒介契約とは?
- 2. 媒介契約はなぜ必要なのか?
- 3. 媒介契約の種類とその中身を解説
- 3-1. 一般媒介契約のメリットとデメリット
- 3-2. 専任媒介・専属専任媒介契約のメリットとデメリット
- 3-3. 仲介会社の狙い
- 4. 一般媒介契約をすすめる理由
- 4-1. 物件の囲い込みを防ぐことができる
- 4-2. 仲介業者に緊張感を持たせることができる
- 4-3. 仲介会社の比較を行うことができる
- 4-4. 仲介会社との交渉がやりやすくなる
- 4-5. 仲介に関する知識を増やすことができる
- 5. 最後に
1. 媒介契約とは?
そもそも論なのですが、媒介契約とは何かということから整理しましょう。
媒介という言葉には、2つのモノの間に入って仲立ちをするという意味があります。
つまり、売り主と買主の間に不動産会社が入り、仲立ちしますよ、ということを意味するのが媒介であり、媒介にあたり不動産会社が売り主と締結するのが媒介契約です。
2. 媒介契約(書面)はなぜ必要なのか?
次に、なぜ媒介契約が必要なのかという点について説明します。
民法では、契約は口頭でも成立し、契約書を締結する必要はありません。(たとえば、本屋で本を買うときは、「買いたいです」、「売ります」という双方の意思が合致すれば、契約は成立します。)
しかし、契約書を締結しない場合、消費者が不利になってしまう恐れがあることから、法律(媒介契約であれば宅建業法)によって、契約書の作成が義務付けられているのです。
つまり、売主を保護するために媒介契約が必要ということになります。(補足なのですが、民法のことを“一般法”、宅建業法のことを“特別法”と言い、 基本的には民法の規定に基づくが、別途特別法に規定されている場合は特別法の規定が優先されます。
この一般法と特別法の違いのイメージを理解したい方は、定期借家契約とは?契約において注意すべきポイント3つというコラムをご参照頂ければと思います。(民法と借地借家法を例に説明させていただいております。)
媒介契約の場合、民法は基本的には契約は口頭で成立すると規定していますが、 不動産の媒介契約に関しては、書面を残さないといけない旨が規定された特別法が存在するため、 媒介契約については書面を残す必要があるのです。
3. 媒介契約の種類とその中身を解説
次に媒介契約の中身に移っていきましょう。
媒介契約には3種類あり、基本的には不動産会社が有利になる条件であるほど、 売主に対する報告の義務等の縛りが厳しくなるというイメージです。 簡単に以下の表にまとめましたので、参考にして頂ければと思います。
3-1. 一般媒介契約のメリットとデメリット
ここでは一般媒介契約のメリットとデメリットを簡単に紹介させていただきます。
売主 | 仲介業者 | |
メリット | 複数の不動産会社と媒介契約を締結することができるため、 不動産会社の営業姿勢を客観的に評価できる | REINS(不動産業者間ネットワーク)への掲載義務、 売り主への進捗の報告義務がないため、業務上の手間がかからない |
デメリット | 物件情報がREINSに登録されない。 業者からの報告がもらえない恐れがあり、進捗が分からない | 他の不動産会社経由で物件が売却された場合、 仲介手数料を取り損ねてしまう恐れがある |
3-2. 専任媒介・専属専任媒介契約のメリットとデメリット
次に専任媒介・専属専任媒介契約のメリットとデメリットを紹介させていただきます。
売主 | 仲介会社 | |
メリット | 物件情報がREINSに掲載される。 不動産会社から業務報告を受けるため、売却の進捗が分かる | 売却が成立すれば、必ず仲介手数料が貰える |
デメリット | 複数の不動産会社からの情報比較ができず、 不動産会社の客観的な評価ができない | REINSへの掲載、売り主への報告義務がある |
3-3. 仲介会社の狙い
それぞれの媒介契約の種類及びメリット・デメリットを把握して頂いた上で、ここでは仲介会社が媒介契約において何を狙っているのかという点について簡単にお伝えさせて頂きます。
結論としては、仲介会社は基本的に専属専任媒介契約又は専任媒介契約を結びたがります。
なぜなら、専属専任媒介契約又は専任媒介契約を結ぶことによってあなたからの 手数料収入(仲介手数料)が入る事がほぼ確約されるからです。
不動産業者は、REINSへの登録、社内での広告費の枠などを説得の材料として、 専任媒介契約又は専属専任媒介契約を締結するよう促してくるでしょう。
一方で、一度専属専任媒介契約を締結してしまうと、不動産会社は営業の手を少し緩めてしまうことも考えられます。なぜなら、契約が継続する限り、その物件が売れた際には 不動産会社は仲介手数料を得ることができるからです。
そういった点や一般媒介契約のデメリットを踏まえ、私は一般媒介契約での契約締結をお勧めしています。ここからその理由について紹介させていただきます。
4. 一般媒介契約をすすめる理由
ここから一般媒介契約をすすめる理由を以下に記載させていただきますが、簡単にその大前提についてお伝えさせて頂きます。
まず、高値で売却するためには、複数の仲介会社に会い、実際に話を聞きながら仲介会社の見極めをしなければいけません。
なぜなら、上述の通り仲介会社には自社の利益のことしか考えていない会社も少なからずあり、そういった会社の戦略を見極めるためにはどうしても複数業者間での比較をする必要があるからです。1社との面談だけで媒介先を決めてしまうのは大きなリスクがあるのです。
つまり、時間がないので1社とだけ面談して媒介契約を結びたいと思われている方には一般媒介契約をおすすめすることができません。
少しの努力が数百万円の違いに結びつきますですので、仕事と考え、複数業者と会話することをお勧めします。
以下で一般媒介契約をおすすめする理由を記載させていただきますが、その前提は複数の会社と面談をしていることであること、お含み置きいただければと思います。
4-1. 物件の囲い込みを防ぐことができる
物件の囲い込みとは、自社が両手仲介をするために他社からの仲介依頼を断って物件を紹介しないことや、物件を紹介せずに対象不動産の人気がないことをアピールし、物件の価格を下げさせることをいいます。
この囲い込みの狙い等を詳しく知りたい方は、物件の売却前に知っておくべき仲介業者の裏側というコラムをご参照いただければと思います。
一般媒介契約であれば、買手を見つけなければ仲介手数料を手にすることができません。
すなわち、物件を自社だけで囲い込んでいる間に他の仲介会社が買手を見つけてしまうかもしれないという焦りから、物件が囲い込まれるということを防ぐことができるのです。
4-2. 仲介業者を選別することができる
専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約でなければ積極的に営業活動をしないという仲介会社である場合、例えその会社と専任媒介契約を結んだしても高いパフォーマンスを期待することはできません。
なぜなら、力がある仲介業者は一般媒介でも売主を見つけることができ、専任媒介でなければ力を入れないという仲介業者はそもそも営業活動に力を入れようと考えていない会社だからです。
つまり、一般媒介契約という条件を提示してあからさまに不機嫌な対応をする仲介会社がいた場合、そもそもその会社と専任媒介契約を結ぶべきではないでしょう。
4-3. 仲介会社の比較を行うことができる
専任契約や専属専任契約の場合、複数の仲介会社と契約することはできません。これは、その仲介会社からの意見があなたの判断材料の全てになることを意味します。
逆に、一般媒介契約の場合、複数の仲介会社の営業動向をしっかりとモニターすることができますので、どの仲介会社がパフォーマンスが良いかすぐに分かります。
まずは一般媒介契約を結び、その仲介会社に営業力があることを確認できれば、一般媒介契約をやめて専任媒介契約を締結するという方法も考えられます。営業上、相見積を取ることは普通ですので、媒介契約においても複数の会社に依頼することは有効ということができるでしょう。
4-4. 営業努力の程度を測りやすい
これは上記4-3.の点とも関連してきますが、一般媒介契約を締結した複数業者の中からめぼしい会社が見つかった場合、その会社と専任媒介契約を締結することができますが、その際に仲介手数料を減額することを条件に専任媒介契約を締結するという交渉を行うことができます。
いきなり手数料の交渉から入ると仲介業者の心象も悪くなりがちですが、交換条件という形で進めることができればお互い納得感をもって話を進めることができます。
4-5. 仲介に関する知識を増やすことができる
これは副次的な意味合いが強いのですが、複数の会社から意見を聞くことによって、不動産の仲介に関する正しい知識を増やすことができます。
なぜなら、複数の仲介会社が違う発言をしていたら、どちらかの発言は誤っている可能性が高いからです。
仲介に対する正しい知識を身に付けることにより、結果として高値で売却することができる確率が高まります。
5. 最後に
不動産は大きな金額が動きますので、その売主を探す仲介業者の選定にあたっては、複数業者と面談の上、しっかりとその能力を見極めるようにしましょう。
複数会社と面談し、信頼できそうな仲介会社を見つけることにより、売値に数百万円の違いが発生することは良く起こり得ます。複数会社との面談を通じ、少しでも手残りキャッシュを増やすようにしましょう。