• 賃貸借契約における「償却」や「敷引」とは何なのか? – 売主のミカタ

    賃貸借契約における「償却」や「敷引」とは何なのか?

    敷引、償却

    オフィスの賃貸借契約において良く見受けられる「償却」や「敷引」という言葉。

    敷金と言葉が似ていることから、敷金のようなものと考えられる方も多いのではないかと思います。

    しかし、「償却」「敷引」は敷金とは別のものとされることが多いです。

    そこで今回は、「償却」「敷引」をしっかりと理解して頂くために必要な情報をお伝えさせて頂きます。

    1. 償却・敷引とは?

    償却・敷引は賃貸借契約の条件の1つとして設定される項目であり、礼金や敷金と同じ項目で表示されることが多いです。

    具体的に賃貸ポータルサイトにおいてどの欄に「敷引」、「償却」が記載されるのか見てみましょう。

    Suumoの場合

    suumo敷引

     

    Homesの場合

    homes敷引

     

    at homeの場合

    athome敷引

    大手賃貸ポータルサイト上では、いずれも敷金や礼金と一緒の欄に記載されていることが確認できたと思います。つまり、敷金や礼金のような性質を持っているのが敷引・償却なのです。

    そして、「敷引」・「償却」の端的な説明としては、後払いの礼金ということができます。

    つまり、「敷」という言葉が付いていますが、敷金としての性質は基本的に有しておらず、現状回復費用に充当させることはできないのです。

    なぜ敷金としての性質を有していないのかという背景や意味について少し考えていきましょう。意味を知っている方が賃貸会社との交渉等もスムーズに進めることができ、さらに背景を知ると頭に残りやすいからです。

    2. 民法上の扱い

    まず、民法上、「敷引」・「償却」がどういった意味を持っているのか紹介させて頂きます。

    と言いつつ、実は「敷引」も「償却」も民法上何ら規定されていません。更には、「敷金」という言葉でさえも民法上何も規定されていないのです。

    ただし、敷金に関しては民法の大改正(2019年施行予定)において規定される予定です。

    民法上の敷引、償却

    つまり、「敷引」・「償却」は不動産業界の慣習上定められたものであり、借主として払わなければいけないものではないという点にまず注意しましょう。

    3. 不動産鑑定評価基準上の償却・敷引の扱い

    次に、不動産評価基準上の償却・敷引の扱いについて説明させて頂きます。

    と言いつつ、民法における扱いと同じく、不動産鑑定評価基準上も「敷引」・「償却」の定義はありません。

    不動産鑑定評価基準上存在する定義は、「敷金」と「礼金」の2種類だけです。

    不動産鑑定評価基準上の敷引、償却

    つまり、「敷引」・「償却」はその言葉の意味すら固まっておらず、業界の慣習として使われている言葉なのです。

    3-1. 家賃の構成要素は?

    それでは、「敷引」・「償却」とは一体何なのでしょうか?ここで少し原点に立ち返り、家賃を原点として「敷引」「償却」の意味を突き詰めていきましょう。

    不動産鑑定評価基準上、家賃(正確には賃料と言いますが、家賃の方がなじみやすいので「家賃」とさせて頂きます)は以下の項目から構成されています。

    • 利益
    • 公租公課
    • 損害保険料
    • 維持管理費
    • 修繕費
    • 貸し倒れ損失
    • 空室等損失
    • 減価償却費

    図で考えてみましょう。

    家賃の構成要素

    上記の図において注目して頂きたいのは「減価償却費」の欄です。

    現実の賃料は需要供給のバランスによって決まりますが、理論上は、オーナーが賃貸経営を行う上で期待する利益に必要とされる経費を足すことによって家賃は決まります。

    ここで、減価償却という点について少し考えてみましょう。

    (減価償却の詳細に関しては減価償却をすっきりと理解するというコラムに紹介させて頂いておりますのでそちらをご参照頂ければと思います。)

    簡単にお伝えさせて頂くと、減価償却とは時の経過に伴う建物の劣化のことをいいます。

    家だと分かりづらいので、車の例で考えてみましょう。ここに10万キロ走ることができる車があり、その価格は100万円だったとします。

    その上で、この車を2万キロ走らせたいという人が出てきたとします。

    レンタカーと償却

    その場合、車を貸す人は2万キロの劣化分も踏まえてレンタル料を設定しますね。

    上記の例では、車の価格が100万円である場合、最低でも20万円貰わなければ貸手は損をしてしまいます。

    家の場合も同じ考え方ができます。家は年の経過に伴って劣化していきますので、その劣化分(減価償却費)も賃料に含まなければオーナーは損をしてしまうのです。

    この考え方に基づけば、退去時に償却費を払うという考えはある程度の妥当性があると考えることができます。

    4. 敷引・償却とは何かを改めて整理

    ここで、あらためて賃料について整理してみましょう。

    賃貸ポータルサイト上で家賃が10万円の物件があったとします。

    この物件のオーナーが家賃に償却費は含んでいない前提で家賃設定をした場合、別途償却費を借手から貰わなければオーナーとして賃貸事業が成立しなくなってしまいます。

    だからこそ、償却費用を徴収するために賃料の条件欄に「敷引」・「償却」という言葉が設定されているのです。

    このような形で整理すると、賃貸ポータルサイトにおいて「敷引」・「償却」がどういった意味を持つのか少しイメージを持つことができるのではないかと思います。(敷引という言葉のイメージからは少し離れてしまいますが。)

    つまり、「敷引」・「償却」は端的な表現としては上述の通り「後払いの礼金」なのですが、「後払いの礼金」が意味するものは、オーナーが貰うべき「償却費の後払い」なのです。

    5. 最後に

    「敷引」・「償却」は民法上の定義も不動産鑑定評価基準上の定義もありませんので、部屋を借りる際にはその点を意識した上で仲介会社と交渉するようにしましょう。

    そして、「敷引」・「償却」は結局礼金のようなものにて、基本的には家賃とのバランスを見ながら条件交渉を行うべき(家賃が高ければ礼金を下げるべき)です。

    他の競合物件とも比較しつつ、有利な条件で部屋を借りることができるように仲介会社と交渉しましょう。

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