不動産投資は投資事業でありながらも金融機関からお金を借りることができる数少ない事業です。
そして、不動産賃貸業の成否を分ける大きなポイントの一つとして、いかにして銀行からの融資を取り付けるのかということが考えられます。
不動産賃貸業を成功させるためにも、不動産投資ローンを通すためのポイントはしっかりと押さえておきたいところ。
そこで今回は、不動産投資ローンを通るために知っておくべきポイントについて、細かく説明させていただきます。
- 目次
- 1. 頭金を貯める
- 1-1. 銀行にとっての頭金の性質
- 1-2. 上記以外で頭金が持つ意味
- 2. 事業計画を作る
- 2-1. 銀行にとって事業計画が大切な理由
- 2-2. 事業計画のイメージを紹介
- 3. 物件周辺の情報をまとめる
- 3-1. 物件周辺情報の作成方法
- 4. ストレスチェックを行う
- 4-1. ストレスチェックを行うことが大切な理由
- 4-2. ストレスチェックのやり方
- 5. 担保物件を持つ
- 5-1. 担保物件を持つ際のポイント
- 5-2. その他の考え方
- 6. 入出金の計画を作る
- 6-1. 入出金計画を作ることのメリット
- 6-1-1. 銀行にとって安心感を与える材料になる
- 6-1-2. あなた自身の収支状況を確認することができる
- 7. 複数の金融機関との繋がりを作る
- 7-1. 複数の金融機関とつながりを作ることが重要な理由
- 7-2. 銀行とのつながりの作り方
- 7-2-1. 実際に銀行に訪問する
- 7-2-2. 不動産仲介会社経由で紹介して貰う
- 8. 最後に
1. 頭金を貯める
銀行に対して示すことができる非常に大きな強みとなるのが頭金です。頭金を言いかえるとただの現金となってしまいますが、頭金を貯めるということは、ただ単純にキャッシュがあることを銀行に示す以上の意味があります。
それでは、頭金は銀行にとってどういった意味を持っているのでしょうか?その内容について見ていきましょう。
1-1. 銀行にとっての頭金の性質
まず、銀行にとって頭金とは、不動産の販売価格と担保価値の差を埋めるという意味でとても重要です。
つまり、銀行にとってみると、担保価値でおぎないきれない分を現金で払ってもらうことができれば、それは銀行にとっても安全な案件とみなすことができるのです。
例えば、住宅ローンのフラット35では、頭金を入れているかどうかで融資の利率が大きく異なってきます。
以下に2016年7月時点でのフラット35の金利を自己資金10%を入れる場合と入れない場合をまとめさせていただきました。見ていただけると分かる通り、頭金を10%入れるかどうかによって金利が大きく異なるのです。
頭金の割合 | 金利(借入期間20年以下) |
10%以上 | 0.850%~1.500% |
10%未満 | 1.290%~1.940% |
つまり、頭金を入れることは、案件の安全性を高めるということに直結するのです。
不動産投資と頭金の関係についてさらに詳しく理解したい方は、不動産投資と頭金の関係【頭金は結局いくらあれば良いのか?】というコラムを参考にしていただければと思います。
1-2. 上記以外で頭金が持つ意味
上記に加え、頭金が持っている意味があります。その意味とは、銀行があなたを定性的に評価する材料となるというものです。
頭金を貯めることができるということは、あなたが倹約家であることを示す何よりの証拠となります。
そういった意味で、頭金を持っていることが好条件の融資を組成するという意味で非常に有効と言えるのです。
2. 事業計画を作る
次は事業計画の作成です。事業計画とは、会社が将来目指すべき姿を、具体的に数字に落とし込んで表したものです。
言い換えると、将来の売上・収支計画ということもできます。
不動産投資ローンを通すため、なぜ事業計画を作ることが重要なのでしょうか?その理由について見ていきましょう。
2-1. 銀行にとって事業計画が大切な理由
事業計画が重要である理由を理解するためには、銀行の融資がそもそもどういったものであるのかという点について考える必要があります。
銀行はお金を貸してリスク管理が終わるということはありません。当たり前の話なのですが、銀行のリスク管理はお金を貸した時だけではなく貸したあともずっと続きます。だからこそ、銀行はお金を貸した相手がしっかりと収益を上げることができるのかという点についてしっかりと確認する必要があるのです。
その際、長期間にわたってしっかりと売上を上げることができるのかという点について整理されたものが事業計画なのです。
逆の発想をすると、将来の売上の見込みがたたないにも関わらず融資の承認を得るということは非常に難易度が高いことであると言うことができるでしょう。
2-2. 事業計画のイメージを紹介
事業計画を作るといっても、作成の経験がなく、どうやって作れば良いのか分からないという方もいらっしゃるのではないかと思いますので、ここで簡単に不動産賃貸業における事業計画のイメージについてご紹介させていただきます。
事業計画のフォーマットは企業によって異なっており、決まった形はないのですが、不動産賃貸業においては現金の動きをしっかりと意識できるような形で記載をすると良いのではないかと思います。
上記は当社で開発・販売している不動産投資シミュレーターにおける各年の収支の概要です。
このシミュレーターでは毎年のキャッシュの動きに加え、損益計算書上での動きも見えるようにしています。不動産の売却時までしっかりと収入を得ることができることを示せれば、融資の可能性も上がっていくでしょう。
3. 物件周辺の情報をまとめる
物件周辺の情報をまとめ、銀行に提出するということも非常に大切なことです。
このポイントの重要性を理解していただくためには、銀行の行内プロセスを理解することが大切ですので、ここで銀行が融資を決めるまでのプロセスについて見ていきましょう。
銀行が物件に対して融資を行う際には、基本的には稟議書を作成した上で行内の審査を通す必要があります。
そして、上記の稟議書作成を行う中で、あなたが購入しようとしている物件がなぜ安全と言えるのか、しっかりと説明しなければいけないのです。
事業計画が定量的な物件の評価とすると、周辺の物件情報は定性的な物件の評価というイメージです。
そして、事業計画を作成する際、不動産投資に精通している銀行員であればある程度簡単に稟議書を作成することができると思いますが、不動産投資に対する知識があまりない場合や、その担当者自身が日々忙しくしており、情報を集める時間がない場合などもあります。
そういた場合に、あなたが銀行員に代わって物件周辺の情報をまとめると、銀行員からも非常に喜んでもらえますし、あなた自身がしっかりと情報をまとめれば、それが融資の承認を得る確率の向上にもつながるのです。
3-1. 物件周辺情報の作成方法
物件周辺情報の作成方法につきましては、この場で紹介させていただくと分量が多くなってしまいますので、別途コラムでご紹介させていただきます。
4. ストレスチェックを行う
物件のストレスチェックを行うことも非常に大切なことです。
ストレスチェックとは、物件の収支の前提に負荷をかけ、どの程度まで黒字を確保することができるのかについてのシミュレーションを行うものです。
4-1. ストレスチェックを行うことが重要な理由
不動産投資ローンを通すためにストレスチェックが必要な理由としては、銀行のリスク管理の一環と考えることができます。
リスク管理の具体的な方法は、案件のリスクを洗い出し、そのリスクに対する対応策をまとめることです。
そして、リスク管理の一環で必要なことがストレスチェックなのです。将来家賃が下がったらどうなるのか、近くの工場が撤退したらどうなるのか。そういったリスクを具体的な数字に落とし込んで考えていくことが非常に重要であり、そういった中で、市況が悪くなった場合でもローンをしっかりと返済することができるのか。そのボーダーについて銀行にしっかりと説明できるようにすることが重要なのです。
4-2. ストレスチェックのやり方
ストレスチェックのやり方についてお伝えさせていただく前に、簡単に前提についてしっかりと整理しましょう。
ストレスチェックを行って確認するべき内容は、キャッシュフローがプラスになるのかという観点と、損益計算書上で黒字になるのかという2つの観点がありますが、基本的にはキャッシュフローがプラスかどうかを判断する方が重要です。
なぜなら、損益計算書で黒字を確保することができたとしても、キャッシュが回らず、借入金の返済ができない場合、銀行にとってそれは融資するべきではない案件と判断されてしまうからです。
ここから、ストレスチェックを行うにあたって負荷をかけるべき項目について記載させていただきます。以下の数字を変えながら、キャッシュがプラスになるかどうか判断すると良いでしょう。
項目 | 負荷のかけ方 |
空室率 | 0%~50% |
金利 | 1%~5% |
修繕費 | 1万円~100万円 |
家賃下落率 | 0.5%~2% |
売却価格 | 購入価格の100%~50% |
管理費 | 家賃の3%~7% |
当社で開発した収支ソフトを活用していただければ、簡単にストレスチェックを行うことができます。
興味がある方はサンプルを送らせていただきますので、お気軽にご連絡下さい。
5. 担保物件を持つ
担保となる物件をしっかりと持つということも考え方としては非常に大切です。銀行が融資を行う際、不動産の担保は本当に有力な物件購入手段となるからです。
ただし、この場合に注意するべきことは、融資を組んで担保物件を持ったとしても実質的にはほとんど意味がないということです。
5-1. 担保物件を持つ際のポイント
担保物件を持つ際のポイントは、抵当権がついていない物件を保有するということです。
なぜなら、第一順位抵当権以外の抵当権の場合、銀行から見ると担保としてその価値を見ることができない場合が多いからです。
そういった意味で、1棟目を購入してから時間が経っていない場合は難しいと思いますが、時間が経って残債が減っている状況においては、借金を一括で返済し、大きな担保余力を作るという考え方も良いかもしれません。
5-2. その他の考え方
不動産はその内容、種類によって担保の価値が大きくことなってきます。
一般的には収益物件の場合は実際の時価よりも担保価値の方が低いということが一般的なのですが、逆に時価よりも担保価値の方が高い物件もありますので、そういった物件を現金で購入することにより、大きな担保価値を作るという考え方も非常に有効です。
時価と担保価値のかい離の具体的な内容については、別途コラムでご紹介させていただければと思います。
6. 日々の生活における入出金計画を作る
銀行から融資を引き出すためには、日々の生活における入出金計画を作るということも非常に重要です。
ここから、なぜ入出金計画を作ることが重要なのかという点についてお伝えさせていただきます。
6-1. 入出金計画を作ることのメリット
入出金計画を作ることのメリットについてここからお伝えさせていただきます。入出金計画を作ることのメリットは大きく分けて2種類ありますので、それぞれの方法について説明させていただきます。
6-1-1. 銀行にとって安心感を与える材料になる
まずは、銀行にとって安心感を与える材料になるという点があげられます。
とりわけサラリーマンで不動産投資を行っている方の場合、不動産投資からの収入とサラリーマンとしての収入以外はほとんどない方が多いというのが現実です。
そういった中で、あなたが浪費家なのか、倹約家なのかという点は、将来のローンの返済において極めて重要な意味を持っています。
だからこそ、あなたが倹約家であることをしっかりとアピールするために、銀行に対して入出金計画を提出することはとても大切なことなのです。
6-1-2. あなた自身の収支状況を確認することができる
次に、あなた自身の収支状況を確認することができるという点も挙げられます。
上記6-1-1.の内容と逆説的な内容になってしまいますが、サラリーマン投資家の場合、収入の額はおおむね決まっていますので、銀行はあなたの源泉徴収票や確定申告の資料を見れば、お金がいくらぐらい貯まっていなければいけないのかという点について把握することができてしまうのです。
例え収入が多くても、貯金がない場合は銀行の評価は非常に厳しいものになります。
そういった意味でも、あなた自身がどれぐらいの支出を毎月しているのかという点についてしっかりと把握しておくことが重要なのです。
7. 複数の銀行(複数の支店を含む)とのつながりを作る
最後に、銀行とのつながりをできるだけ広げておくことが極めて重要です。
7-1. 複数の銀行とのつながりを作ることが重要な理由
まず、複数の銀行とのつながりを作ることが重要である理由についてお伝えさせていただきます。
大前提として、銀行の大きな融資方針はそれぞれの銀行によってきまっていますので、大きな範囲でこの点がぶれることはありません。
しかし、その大きな大方針にもとづいた個別の融資に関しては、支店単位で裁量が与えられていることが非常に多いのです。
7-2. 銀行とのつながりの作り方
ここからは、具体的に銀行とのつながりをどうやって作っていけば良いのかという点について説明させていただきます。
具体的には2つの方法がありますので、それぞれの場合についてどうやって銀行との関係を作っていけばよいのかという点についてお伝えさせていただきます。
7-2-1. 実際に銀行に訪問する
まずは、実際に銀行に訪問して関係を作るという方法があります。
銀行は融資をすることが仕事ですから、具体的な物件の情報と共に銀行に融資の相談をすれば、銀行の担当者は喜んで相談にのってくれるでしょう。
そして、そこで知り合った担当者の方と連絡を取り合い、関係を作るのです。
ただ、銀行は基本的に平日の15時までしか営業していませんので、サラリーマンの方にとっては難しいかもしれません。平日の時間を有効に使えるサラリーマンの方にとっては有効と言えるでしょう。
7-2-2. 不動産仲介会社経由で紹介して貰う
次に、不動産仲介会社経由で紹介して貰うという方法もあります。
不動産の仲介会社も、成約数を増やすために銀行との接点を増やすべく努力をしています。
だからこそ、そういった不動産仲介会社と知り合うことが出来た際に率直に金融機関の紹介を依頼してみましょう。
この時、具体的な案件がないにも関わらず紹介の依頼をしてはいけません。具体的な案件がないにも関わらず紹介する理由が不動産仲介会社側にないからです。
具体的な案件と共に銀行を紹介して貰い、電話などで担当者と何回か会話をすれば関係を作ることが可能になるでしょう。
8. 最後に
不動産投資ローンを通すために必要なポイントについてご紹介させていただきました。
すぐにローンを組成できる状況を作ることは難しいかもしれませんが、日々の行動の積み重ねは必ず銀行の評価に繋がっていきます。
今回のポイントをしっかりと押さえ、ローンの選択肢を一つでも増やしていくことができるようにしましょう。