不動産会社から営業の電話がかかってきた。
電話口では「節税対策ができます。納めた税金が返ってきます。」と営業マンが言っている。
かなり怪しいけど、税金が返ってくるのは嬉しい。ちょっと話を聞いてみようかな。
あなたも、このような経験はないでしょうか?
しかし、何も調べないで不動産会社の営業マンに会うことは、ちょっと危険かもしれません。
そもそも、節税対策って何なのでしょうか?分かるようで良く分からないですよね。
そこで今回は、節税対策の本当の意味と、新築ワンルームへの投資の是非について、不動産のプロが分かりやすく解説します。
新築ワンルームの場合、既に節税スキームは破綻しています。
結論からお伝えします。新築ワンルームでは、残念ながら節税効果は期待できません。
むしろ、新築ワンルームの場合は節税効果どころか、買うこと自体が間違っていることが極めて多いです。
その理由について、ここからお伝えしていきましょう。
新築ワンルームを買う前に、この記事をしっかりと読んでくださいね!
節税できる!と錯覚させる魔法のことば、それが「減価償却」です。
節税におけるキーワードとなるのが、減価償却という言葉です。
節税対策について理解をするためには、少なくとも減価償却という言葉を理解しなければいけません。
ここから減価償却について簡単に説明していきますが、詳しく学びたい方は、ぜひこちらの記事を読んでみて下さい。
減価償却を一言で言うと、お金を生み出す一方、使える期間が限られている資産に関し、費用を段階的に認識する会計処理の方法。と表現することができます。と言っても、よくわからないですよね。この文章はあまり気にしなくても構いません。
具体例で説明していきますね。
ここに、20年使える自動販売機があるとしましょう。この自動販売機の値段は100万円、この自動販売機は、毎年10万円の収入を上げてくれます。
つまり、この自動販売機は、毎年10万円の利益を出してくれるわけです。
そして、毎年10万円の利益が出ていますので、この10万円に対して税金を払う必要があります。
一方、購入時の支出に目を向けてみましょう。自動販売機の購入時に100万円を払っていますので、この100万円は「費用」になります。
つまり、購入した年は100万円の大きな損が出る一方、次の年からは10万円の利益が出る。という形になります。
そうすると、納めるべき税金に大きな違いが発生してしまいますよね。
それは良くない!ということで使われるのが、減価償却という考え方です。
先ほどの自動販売機、普通に使えば20年使えるとしましょう。
そして、20年使えるのであれば、購入時に一気に100万円を費用にするのではなく、20年に渡って5万円ずつ費用にするようにしよう。
というのが減価償却の考え方です。(厳密には違いますが、イメージしやすくするためにこのような表現にしています。)
そうすると、10万円の収入に対して5万円の費用、すなわち利益は5万円という年が20年続くことになりますので、20年間、5万円の利益に対して税金を納めれば良いのです。
毎年納める税金が安定しました!
ポイントその2 給料と不動産の所得は合算される
先ほど、減価償却の考え方についてお伝えしました。
節税対策について理解するためには、もう一つ押さえておくべきポイントがあります。
それは、給与所得と不動産所得は、合算して計算される。ということです。
これは、合算されない場合をイメージすると分かりやすいと思います。
あなたが会社で働き、年間の給与所得が500万円だったとしましょう。
その一方、あなたはパチンコが大好きで、年間で500万円の損を出してしまったとします。
この時、あなたが納める税金はいくらでしょうか?
正解は、給料所得の500万円に税率をかけた金額が納めるべき税金になります。
なぜなら、パチンコで出た損(損失)は、給与所得から差し引くことができないからです。
その一方、不動産所得は、給与所得と合わせて納税額が計算されます。
つまり、給与所得が500万円、不動産所得が500万円であれば、1,000万円に対して税金を払う必要があるのです。
給与所得と不動産所得は合わせて計算される。という点をしっかりと押さえておきましょう。
不動産所得がマイナスになると、納める税金が減る
先ほど、給与所得と不動産所得は合算されるというお話をしました。
では、給与所得が500万円で、不動産所得が▲500万円だとどうなるのでしょうか。
この場合、所得はゼロになりますので、納めるべき税金は0円です。
この時に考えなければいけないのが、サラリーマンの源泉徴収です。
サラリーマンの方は、会社が計算した見込み年収額に応じ、自動的に税金を引き、あなたの代わりの納税してくれます。
会社としては、500万円の所得を前提として税金を差し引きます。しかし、実際は所得は0円ですので、会社が天引きして税金が戻ってくることになるのです。
これが、節税対策のポイントです。
減価償却に立ち戻ろう
先ほどの例で、不動産所得がマイナスになると、給与所得が経る。というお話をしました。
ただ、不動産所得がマイナスになるなんてあり得るの?と思う方がいるかもしれません。
結論ですが、不動産所得がマイナスになることは、ありえます。
この時、重要なポイントがあります。それは、減価償却というルールをうまく使うことによって、不動産所得がマイナスになることがあるのです。
500万円の不動産を購入したとしましょう。ここで、1年で500万円を減価償却として費用にできるとしたらどうなるでしょう?
給与所得が500万円だとすると、不動産所得が▲500万円。結果として所得は0円になりますから、会社が天引きした税金分が返ってくることになるのです。
これが節税対策のポイントです。減価償却によって、経費を増やし、不動産所得をマイナスにすることによって、税金を取り戻すのです。
新築ワンルームの償却条件を理解しよう
ここで、本題である新築ワンルームの話に戻りましょう。
ワンルームが節税対策に有効、という営業マンの話が本当かどうか、確認してみましょう。
減価償却の期間は国が決めていますので、不動産の所有者が勝手に決めてはいけません。
そして、新築ワンルームの場合(厳密には、鉄筋コンクリート造の場合)、減価償却の期間は47年です。
つまり、不動産の値段が470万円の場合、減価償却として毎年経費にできるのは10万円です。
減価償却で一気に費用を出す、という観点では、あまりうまみがないですよね。
節税対策の具体例:築古木造の場合
ご参考までに、減価償却の金額を大きく取れる不動産についてご紹介します。
償却の金額を大きく取れる構造は、ズバリ築古の木造です。具体的には、築22年以上の木造物件です。
この物件は、何と4年で減価償却をすることができます。
つまり、不動産の価格が400万円の場合、毎年100万円を経費にすることができるのです。
これは、新築ワンルームの10倍以上です。
つまり、新築ワンルームは、一度に大きな金額を減価償却として経費にできないのです。
なぜ節税対策と言ってるのか?
そうすると、営業マンが言っている節税対策とは一体何なのでしょうか?
ここで、新築ワンルームの節税の真実についてお伝えしましょう。
結論をお伝えします。新築ワンルームの節税対策は、赤字の事業を買うことによって、本業(サラリーマン)の利益を潰す行為です。
さきほど、新築ワンルームでは多額の減価償却費用を計上することはできないとお伝えしました。つまり、減価償却を使って不動産所得を赤字にすることは難しいのです。
しかし、不動産所得を赤字にしなければ税金は戻ってきません。
だからこそ、割高な物件を買い、毎月の不動産所得がマイナスにするようにするのが、新築ワンルームの投資の真実なのです。
全ての新築ワンルームが駄目、ではありません
ここまでお話をすると、新築ワンルームは買ってはいけない。という結論になってしまいますが、全てのワンルームマンションが駄目という訳ではありません。
具体例で見ていきましょう。
ここに、東京駅徒歩5分、1,000万円で売られているワンルームマンションがあり、このワンルームマンションは毎年200万円の家賃が入るとしましょう。
このような物件であれば、不動産所得がプラスになるので「節税効果」にはなりませんが、あなたのキャッシュは間違いなく増えていきます。
一方で、5,000万円で買ったけど、毎年の家賃は100万円。といった、収益性が悪いワンルームマンションがあったとします。
こういった物件を買ってしまうと、不動産所得がマイナスになるので、「節税効果」はありますが、実質的には損をしているのです。
最後に
新築ワンルームマンションの節税対策の本当のところについてお伝えしました。ポイントを改めて整理してみましょう。
- 減価償却が節税のポイント
- 新築ワンルームには、減価償却による節税効果はほとんど期待できない
- 結局は、不動産事業でも黒字を出した方が、最終的な手残りは多い
節税対策というのは、魔法のような言葉なのですが、結局は本業の所得がプラスだから成り立つのです。
そして、不動産所得をマイナスにするよりも、プラスにして税金を払った方が、最終的な手残りの現金が増える場合がほとんどです。
ワンルームマンションの購入を考えている人は、この記事の内容をしっかりと理解した上で検討を進めるようにしてくださいね!