不動産を購入しようとされる方の中には、収益価格という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
他方、収益価格がなぜ使われるのか、その計算方法の背景は何なのか、収益価格を知っているとどういったメリットがあるのかという点について詳しい解説はあまりないように見受けられます。
そこで今回は、収益価格の計算方法とその意味について詳しく解説させていただきます。
目次
- 1. 収益価格って要は何なの?
- 1-1. 株の場合で考える
- 1-2. 不動産の場合で考える
- 2. 収益価格はどうやって決まるのか?
- 3. 収益価格の具体的な計算方法
- 3-1. 直接還元法
- 3-2. Discounted cash flow法(DCF法)
- 3-3. 計算方法まとめ
- 4. 収益価格を使うと良い場面
- 5. 収益価格を使ってはいけない場面
- 5-1. マイホームを購入する場合
- 5-2. 分譲マンションを購入する場合
- 6. 最後に
1. 収益価格って要は何なの?
まずは収益価格が何なのかという点について簡単に紹介させていただきます。
収益価格とは、収益、すなわち「家賃収入」から計算された不動産の価格のことを言います。
不動産の場合ですとイメージが沸きづらいと思いますので、株を素材に、具体歴な例で考えてみましょう。
1-1. 株の場合で考える
株を例に出して考えてみましょう。不動産の場合における「家賃収入」は株式における「配当」と同じと考えることができます。
ここで、ある二つの企業があったと仮定します。
一つの企業(企業”A”)は配当が年間10万円、もう一つの企業(起業”B”)は配当が年間5万円だったとしましょう。この場合において、それぞれの会社の株をあなたはいくらだったら購入するでしょうか?
単純に考えれば、企業Aの株価は企業Bの株価の2倍であるべきですよね。なぜなら、企業Aは企業Bよりも2倍の配当を貰うことができるからです。
1-2. 不動産の場合で考える
不動産の場合も基本的には同じ考え方をします。
100万円の収益を出してくれる不動産は、50万円の収益を生み出してくれる不動産の2倍の価値があると判断されるのです。
要は、不動産を投資商品と考え、「収益(家賃)」から「元本(建物)」の価値を計算することが収益価格を算出するということなのです。
2. 収益価格はどうやって決まるの?
収益価格のざっくりとしたイメージを掴んでいただいた上で、具体的にどうやって収益価格が決定されるのかという点について考えていきましょう。
再び具体例で考えてみます。
ここに、不動産が二種類あったとします(不動産”A”と不動産”B”としましょう)。そして、不動産Aからは毎年100万円の収益が、不動産Bからは50万円の収益が出てくるとします。
単純に考えると、不動産Aの価格は不動産Bの価格の2倍になるはずですよね。不動産Aは不動産Bの2倍の収益性があるからです。
次に、少し条件を加えて考えてみましょう。以下の仮定を設定します。
不動産”A” : 築30年のぼろぼろ築古木造
不動産”B” : 築3年のピカピカ鉄骨造
この場合、あなたは不動産”A”と不動産”B”のどちらをいくらで購入するでしょうか?
少なくとも、不動産”A”と不動産”B”の間で2倍の差が生じるということはないという点はご理解いただけるのではないかと思います。
その理由は、収益を実現させることができる可能性が異なるからに他なりません。
収益は2倍の差があったとしても、実際の不動産の価格に2倍の差は生じません。
築30年の物件であれば築3年の物件と比べて収益を維持できる可能性が低いからこそ、不動産の価格が低くなるのです。
つまり、家賃が将来にわたってどれぐらい確実に得られるのか。という観点を踏まえて不動産の価格(収益価格)は決定されるのです。
3. 収益価格の具体的な計算方法
どういった場面で収益価格が使われるのかという点について理解していただいた上で、収益価格の計算方法について見ていきましょう。
収益価格の計算方法は2種類あります。それぞれについて説明させていただきます。
3-1. 直接還元法
まずは直接還元法です。直接還元法の定義は以下の通りです。
直接還元法は、一期間の純収益を還元利回りによって還元することによって算出する方法です。
計算式に関しては以下の図をご参照下さい。
ここでの「還元利回り」は「期待利回り」と認識して頂ければと良いです。
3-2. Discounted cash flow法(DCF法)
次に、Discounted cash flow法(DCF法)について見ていきましょう。DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益を、それぞれの発生時期に応じて割引合計する方法のことを言います。
つまり、直接還元法は毎年の収支を平準化して不動産の価格を出し、DCF法は毎年の収支をしっかりと計算した上で不動産の価格を出す方法という違いがあります。
割引率について詳しく理解したい方は、不動産投資と割引率の関係(割引率の正体)というコラムや、割引率を身近な具体例と共に理解するというコラムをご参照頂ければと思います。
3-3. 計算方法まとめ
還元利回り、割引率をどう設定するかによって収益価格は大きく変わってくるのですが、この還元利回り、割引率は単純に「期待収益率」と考えて頂ければ良いと思います。
つまり、元本に対して毎年10%のリターンを得たい場合においては、元本が1000万円であれば期待する家賃は100万円ですね。
逆の考え方をすれば、100万円を10%(0.1)で割ることによって収益価格の1,000万円を計算することができます。
4. 収益価格を使うと良い場面
収益価格の計算方法のイメージを持っていただいた上で、収益価格をどういった場面で使うべきなのかという点について説明させていただきます。
ここまでの説明の流れでイメージされている方も多いのではないかと思いますが、収益価格を使うべき場面は投資用の不動産を購入する場合です。
投資家の方が求めているものは、収益/キャッシュです。つまり、不動産投資は投資家にとってキャッシュを得るための手段の一つでしかなく、他の投資商品と比べて不動産からの収益性が低ければ、他の投資商品を購入するという選択をします。
つまり、投資家は不動産がどれぐらい稼いでくれるのかという点が最も気になるのです。不動産からの稼ぎは家賃収入に他なりません。だからこそ、有効になるのが収益価格なのです。
5. 収益価格を使ってはいけない場面
逆に、収益価格を使ってはいけない場面もありますので、ここでご紹介させていただきます。
具体的にお話しさせていただいた方がイメージがわきやすいと思いますので、具体例と共に説明させていただきます。
5-1. マイホームを購入する場合
まずは、マイホームの価格を計算する場合です。これから家を買おうとしている方がどういった形で不動産の価格を計算するか考えてみましょう。
普通に考えると、土地の値段に建物の価格を足したものが不動産価格になると考えますよね。
少なくとも、マイホームを賃貸に出したら毎月20万円儲かるからそこから逆算して不動産の価格は3,000万円だ、といった計算はしないのと思います。
5-2. 分譲マンションを購入する場合
次に、都内などの分譲マンションを購入する場合を考えてみましょう。分譲マンションを購入する方は、複数の物件を見学し、それぞれの値段と設備を天秤にかけながら最終的に購入する物件を決めるとういのはイメージが湧くのではないかと思います。
この場合においても、マンションを賃貸に出したら毎月30万円儲かるというところから逆算して不動産の価格は4,000万円だ、といった計算はしないのではないかと思います。
つまり、分譲マンションの購入においても、収益性から建物の価格を計算するということは行わないということがご理解頂けるのではないかと思います。
6. 最後に
収益価格は投資家目線での価格ですが、例えマイホームであってもそれを賃貸することによって十分に収益を得ることができるのであれば、投資家の投資対象となります。
つまり、お寺などの特殊な建物ではない限り基本的に収益価格は有効な指標ですので、不動産の購入においては常に収益価格を頭の片隅に置いておくようにしましょう。