不動産の減価償却の仕組みと計算方法を詳細に解説

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欧州の建物

不動産を購入して家賃収入を得ると、基本的に確定申告を行わなければいけません。

そして、不動産の確定申告において減価償却費の計算は必ず必要になってきます。

今は会計ソフトなどで自動計算をすることもできますが、できれば減価償却費の計算方法はしっかりと理解しておきたいものですよね。

そこで今回は、不動産の減価償却のしくみを詳細に解説させていただきます。

目次

1. 減価償却とは?

初めに減価償却の定義について簡単に見ていきましょう。減価償却の定義は以下の通りです。

減価償却とは、長期間にわたって使用される固定資産の取得に要した費用を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。

この文章だけではあまりしっくりと来ない方もいらっしゃるのではないかと思います。

減価償却という言葉の意味や、そもそも減価償却とは何なのか?という点については別のコラムにて記載しておりますので、減価償却という言葉の意味についてしっかりと理解したい方は、減価償却ってそもそも何なのか?減価償却の考え方を詳細に解説というコラムをご参照下さい。

2. 不動産における減価償却

次に、不動産における減価償却の基本的な考え方や計算方法について具体的に見ていきましょう。

2-1. 減価償却の対象となる金額は?

まずは、減価償却の対象となる金額について簡単に説明させていただきます。

現在のルールでは減価償却の対象は契約上の金額とされています。

すなわち、契約上の金額が時価とかい離していたとしても、契約上の金額が減価償却の対象となるのです。

時価と簿価、どちらを採用するか

なぜこのような考え方をするのかというと、投資家・金融機関に客観的な情報を提供するという会計の目的が背景として挙げられます。

すなわち、「時価」は人によってまちまちであるため、契約書に記載されていない「時価」を減価償却の対象にしてしまうと、意図的に金額を操作することができてしまうことから、客観的な指標ということで売買価格が用いられているのです。

実際には、時価と売買金額があまりにもかい離している場合、贈与とみなされて贈与税が課される場合もありますが、普通に第三者から不動産を購入する場合に時価と大きくかい離することはありませんので、このあたりの詳細説明は割愛させていただきます。

2-2. 不動産を土地と建物に分ける

減価償却の対象となる金額を決定したら、次に土地と建物に分ける必要があります。

不動産を建物と土地に分解

なぜ土地と建物に分けるのかというと、土地は減価償却費を計上してはいけないからです。

ここで簡単に、なぜ土地は減価償却費を計上してはいけないのかという点について簡単に説明させていただきます。

この点を理解するには、改めて減価償却の定義に立ち返る必要がありますので、減価償却の定義を改めてみていきましょう。

減価償却の定義に、「その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続き」という言葉がありました。この言葉を逆にとらえると、使用できる期間が決まっていない場合は費用配分することができないと言うことができます。

すなわち、土地は永続的に使用することができるので、減価償却費を認識をしてはいけないのです。

建物と土地の償却の概念図

具体的な土地と建物の按分方法については、土地と建物の具体的な按分方法3つを分かりやすく解説というコラムを参考にしていただければと思います。

2-3. 建物を躯体と設備に分ける

不動産を建物と土地に分けた後は、必要に応じて建物を躯体と設備部分に分けましょう。

ここで「必要に応じて」と記載した背景としては、一般的な不動産取引において売買契約書に躯体部分と設備部分を分けて記載することはほとんどないからです。

後述の通り、躯体と設備に分けることによってより大きな節税効果を得ることができる可能性もありますが、躯体と設備に分ける作業は多大な時間を費やしますので、時間に余裕がある場合にチャレンジしてみると良いのではないかと思います。

ここからは、躯体部分と設備部分の分け方について説明させていただきます。

2-3-1. 躯体と設備の違いを把握する

躯体部分と設備部分を分ける前に、それぞれの違いについてしっかりと整理しましょう。

躯体と設備の具体例については、国税庁のホームページに簡単に記載されていますので、それをベースに分けることが合理的です。

国税庁HP、耐用年数(建物・建物附属設備)表はコチラ

上記リンクを見ると、設備に該当するものは以下のようなものが挙げられるという記載があります。

設備に該当するもの
アーケード
日よけ設備
電気設備(照明含む)
給排水設備
衛生設備
ガス設備

端的な説明としては、配管、トイレ、洗面台、風呂桶、キッチンなどが設備になると考えていただければ良いです。

2-3-2. 再建築費評点数算出表を活用して躯体と設備を分ける

建物と土地の按分割合を決めるのに根拠が必要なことと同様、建物を躯体と設備に分ける際にも根拠が必要です。

新築物件であればハウスメーカーから送付される見積もり書をベースとして躯体と設備に分けることができますが、中古物件の場合は見積書などはありませんので、各市町村の税事務所に保管されている「再建築費評点算出表」の写しを貰い、躯体部分と設備部分に分けていきましょう。

評点の計算方法のイメージは以下の図をご参照いただければと思います。

設備の評点表

3. 減価償却費の計算方法(躯体)

2.において売買代金をを建物と土地に分けることができました。

減価償却費を計上することができるのは建物部分ですので、ここからは建物価格に関して具体的にどのように減価償却費を計算していくのかという点についてみていきましょう。

まずは躯体部分に関して説明させていただきます。建物を躯体と設備に分けない方は、全て躯体とみなして計算していただいて問題ありません。

3-1. 構造別の耐用年数を知る

減価償却費を計算するため、まずは構造別の耐用年数を把握しましょう。

不動産投資における建物の種類は大きく4種類に分けられます。その4種類は以下の通りです。

  1. RC(鉄筋コンクリート)
  2. 重量鉄骨
  3. 軽量鉄骨
  4. 木造

不動産のポータルサイトにもこの情報は基本的に掲載されていますが、分からない方は仲介会社に問い合わせしてみると良いでしょう。

また、登記簿を見ることによっても確認することできますので、登記簿が手元にある方は登記簿を見てみましょう。以下の登記簿では、構造がRCであることが分かります。

登記簿と建物構造の関係

構造を確認して頂いた上で、次に構造別の耐用年数について見ていきましょう。

構造別の耐用年数は以下の通りです。

構造 耐用年数
RC 47年
重要鉄骨 34年
軽量鉄骨 27年
木造 22年

頑丈な構造であるほど、その耐用年数は長いものとされています。また、厳密には更に細かい分類があるのですが、不動産投資や居住用の住宅の購入において上記以外の法廷耐用年数を用いることはほとんどありませんので、詳細な説明は割愛させていただきます。

上記以外の建物の法廷耐用年数を知りたい方は、以下のリンクをご参照いただければと思います。

主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)

3-2. 築年数から償却期間を計算する

次に、築年数から償却期間を計算していきましょう。

3-2-1. 新築の場合

新築の不動産の場合は、上述の法定耐用年数表をそのまま使っていただければ問題ありません。

3-2-2. 中古物件(法定耐用年数経過前)の場合

中古物件であり、法定耐用年数経過経過前の不動産の償却期間は以下のように計算します。

法定耐用年数 - 築年数 x 0.8 = 償却期間

ざっくりとしたイメージとしては、基本的に耐用年数から築年数を引いたものが償却期間になるとイメージしていただければと思います。

3-2-3. 中古物件(法定耐用年数経過後)の場合

中古物件であり、法定耐用年数経過後の不動産の償却期間は以下の通りです。

厳密には、法定耐用年数 x 20%の期間(小数点は切り捨て)となりますが、以下の数字を覚えてしまった方が早いのではないかと思います。

構造 償却期間
(法定耐用年数経過後)
RC 9年
重量鉄骨 6年
軽量鉄骨 5年
木造 4年

3-3. 1年ごとの償却額を計算する

上記が終われば、あとは1年ごとの償却額を計算することによって減価償却費を計算することができます。

躯体部分は定額償却、すなわち、毎年償却費として計上することができる金額は一定である点も注意しましょう。

以下に定額法のイメージを載せさせていただきます。

定額償却のイメージ

4. 減価償却費の計算方法(設備)

次に、設備部分の減価償却費の計算方法について見ていきましょう。

4-1. 耐用年数を知る

まずは設備の耐用年数について学びましょう。基本的には15年と考えていただいて問題ありませんが、一部15年ではない償却期間を取る設備もありますので、その点も合わせてお伝えさせていただきます。

大項目 中項目 耐用年数
アーケード・日よけ設備  主として金属製のもの 15年
その他 8年
電気設備(照明含む)   15年
給排水設備   15年
衛生設備   15年
ガス設備   15年

4-2. 経過年数から償却期間を計算する

耐用年数を確認した上で、経過年数から償却期間を計算していきましょう。

償却期間の計算方法は躯体の場合と同じですので、計算方法を確認したい方は3-2. 築年数から償却期間を計算するを参照いただければと思います。

定率法に関しては、ルールが頻繁に変わっていますが、今は200%定率法というルールに従って償却費を計上していきます。

4-3. 償却期間から各年の償却額を計算する

償却期間を計算したら、最後に各年の償却額を計算していきましょう。

平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法による償却方法は200%定率法を採用するよう定められていますので、今回は200%定率法を前提とした計算方法をご紹介させて頂きます。

まずは定率法のイメージを図でご紹介させていただきます。簿価が一気に減っていくことがお分かりいただけるのではないかと思います。

定率償却のイメージ

200%定率法のポイントは以下の通りです。

①基本的には定額法の2倍のスピードで償却費を計上していく

②200%定率法による償却額が保証額(購入額 x 保証率)を下回った場合、簿価 x 改定償却率に基づいて償却を進める

③改定償却率を一度用いたら、次年度以降は②と同額を計上し続ける

簡単な例で説明させていただきます。以下のような設備を購入したと仮定します。

金額 償却期間
10,000円 10年

この設備の償却率、改定償却率、保証率は以下の通りです。

償却率 改定償却率 保証率
0.2 0.25 0.06552

この設備の場合、単年の減価償却費が655円(購入額10,000円 x 保証率0.06552)を下回った場合、それ以後の償却費の計上には改定償却率を使います。

実際に計算してみましょう。

  簿価 償却額 残存簿価
1年目 10,000 2,000 8,000
2年目 8,000 1,600 6,400
3年目 6,400 1,280 5,120
4年目 5,120 1,024 4,096
5年目 3,277 655 2,621
6年目 2,621 655 1,966
7年目 1,966 655 1,311
8年目 1,311 655 656
9年目 656 655 1

ここでのポイントは、6年目以降の償却額です。

5年目の償却額が655であり、これは保証率をベースとした償却額と同じです。つまり、6年目の償却額は保証率をベースとした償却額と異なってしまいますので、6年目からは改定償却率0.25を使い、2,621 x 0.25 = 655を償却額として使うのです。

結果として、最後の年の簿価を1にすることができました。

非常にややこしいのですが、これが200%定率法に基づく減価償却額の計算方法です。

5. 実際に減価償却費を計算する

最後に、実際に減価償却費の計算をしてみましょう。前提とする不動産は以下とします。

減価償却の対象とする資産

この資料の中で使うのは、グレーの網掛けにさせていただいている、価格築年数建物構造の3種類です。

5-1. 建物と土地に分ける

まずは不動産を建物と土地に分けていきましょう。

ご紹介させていただいた通り、建物と土地の按分方法は複数あるのですが、今回は便宜上、建物1億円、土地6,500万円とします。

不動産価格
1億6,500万円
内建物価格 内土地価格
1億円 6,500万円

5-2. 建物を躯体と設備に分ける

次に、建物を躯体と設備に分けていきましょう。

今回は便宜上、躯体8,000万円、設備2,000万円とします。

不動産価格
1億6,500万円
内建物価格 内土地価格
1億円 6,500万円
内躯体部分 内設備部分
8,000万円 2,000万円

5-3. 建物(躯体)の減価償却費を計算する

ここから具体的な計算に移っていきます。まずは躯体部分の減価償却費を計算しましょう。

5-3-1. 償却期間を計算する

まずは償却期間を計算します。

この建物は、築26年の鉄筋コンクリート造であり、未だ法定耐用年数を超えていない不動産ですので、以下の計算式を用います。

法定耐用年数 - 築年数 x 0.8 = 償却期間

上記に鉄筋コンクリートの法定耐用年数47年と、築年数26年を代入することによって、この不動産の償却期間は26年と計算することができました。

5-3-2. 償却額を計算する

躯体部分の償却は定額法にて行わないといけませんので、償却期間を計算することができれば、あとは躯体部分の価格を償却期間で割ることによって毎年の償却額を計算することができます。

この不動産の躯体部分の価格は8,000万円ですから、これを26年で割り、1年あたりの償却額は約308万円と計算することができました。

5-4. 建物(設備)の減価償却費を計算する

次に、設備部分の減価償却費を計算していきましょう。

5-4-1. 償却期間を計算する

設備部分の償却期間は基本的に15年ですので、今回も15年を償却期間とします。

そして、この物件は築26年ですから設備部分の償却期間を超えています。従って、設備部分の償却期間は15年 x 0.2 = 3年となります。

5-4-2. 償却額を計算する

最後に償却額を計算していきます。国税庁にて作成している償却率、改定償却率、保証率をまとめた表に従うと、償却期間3年の場合は以下の数値を用いることとされています。

償却率 改定償却率 保証率
 0.667 1.000 0.11089 

上記以外の償却期間から償却率、改定償却率、保証率を確認したい方は、国税庁の以下ページをご参照下さい。

国税庁HP 定額法と定率法による減価償却

  簿価 償却額 残存簿価
1年目 20,000,000 13,340,000 6,660,000
2年目 6,660,000 4,442,220 2,217,780
3年目 2,217,780 2,217,779 1

ここで注意するべきなのが、3年目の償却額です。

簿価2,000万円 x 保証率(0.11089) = 2,217,800となり、3年目の償却額を上回りますので、3年目の償却額は改定償却率を用いて2,218,780 x 1.000 = 2,217,780円を減価償却費として計上します。

(実際には残存簿価は1円にする必要がありますので、3年目の償却額は2,217,779円となります。)

ここから、各年の減価償却額を計算することができました。

5-5. 減価償却額を整理する

ここまで計算してきた躯体と設備の減価償却額を簡単に整理していきましょう。

(概算で記入しています。また、6年目以降は308万円の定額償却が繰り返されるため、記載を割愛しております。)

  簿価 躯体償却費 設備償却費 償却額計 期末簿価
1年目 10000万 308万 1,334万 1,642万 8,358万
2年目 8,358万 308万 444万 752万 7,606万
3年目 7,606万 308万 222万 530万 7,076万
4年目 7,076万 308万 0万 308万 6,768万
5年目 6,768万 308万 0万 308万 6,460万

上記の償却による簿価の減少をグラフにしたものがこちらです。設備の定率償却が取れる1~3年目に多額の償却費を計上することができていることがお分かりいただけるのではないかと思います。

各年の簿価推移

6. 減価償却費計算にあたっての注意点

最後に、減価償却費計算に当たっての注意点についてお伝えさせていただければと思います。

6-1. 減価償却費の計算は月単位で行う

今回の計算では1年毎の償却額を計算させていただきましたが、実際は月割りで償却費を計算する必要があります。

例えば、5月に資産を取得した場合、その年の償却額は8か月 / 12か月 = 一年の約67%分しか減価償却費を計上することができないという点に注意しましょう。

6-2. 定率法を適用するためには、税務署に届け出を提出する必要がある

設備に関しては定率法による減価償却を行うことができますが、定率法を適用するためには税務署に届け出をしなければいけません。

ここでその書類と記載方法についてお伝えさせていただきます。

届出書に関しては、国税庁の以下ページをご参照下さい。

所得税の減価償却資産の減価償却方法の届出書はコチラ

書類の記載方法は以下を参考にしていただければと思います。

定率法届出書

7. 最後に

不動産投資において重要な減価償却の仕組み及び具体的な計算方法についてご紹介させていただきました。

今後不動産を購入する場合の参考となれば幸いです。

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