このページを読まれているあなたは、不動産会社の営業マンから「高積算ですよ!」というアピールを受けたことが一度はあるのではないでしょうか?
「積算が高い物件」と聞くと、なんとなく良い物件ではないかと思ってしまいますよね。
しかし、実はそこに大きな落とし穴があるのです。積算を信じて不動産を買うと、最悪の場合「破産」という大惨事にも繋がりかねません。
では、なぜ積算価格を信じてはいけないのでしょうか?
そもそも、積算価格ってなんなのでしょうか?
積算価格が高い物件を買ってはいけない理由について、背景と共に説明していきます。
積算価格の本質を掴みましょう
積算評価が出る物件=高い物件
結論からお伝えします。
積算評価が高い物件を買ってはいけない理由、それは、積算評価が出る物件=物件の「価格が高い」場合がほとんどだからです。
もちろん例外もありますが、基本的には積算価格が高い物件は値段も高い物件である場合がほとんどです。
そして、なぜ高くなるのか、という理由を押さえておくことが、積算価格の深い理解につながります。
ここから、積算価格が高い物件は値段も高い理由について考えていきましょう。
積算が高い=融資が付きやすい
積算価格が高い物件の値段が高くなる理由。それは、積算価格が高い物件は融資が付きやすいからです。
銀行というのは、物件に対する融資額を決める時、積算評価をもとに決定することがほとんどです。
ちなみに、積算価格とは土地と建物の時価を元に不動産の価格を決める方法です。
積算価格について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にして下さい。
ちなみに、なぜ銀行が積算価格をもとに融資額を決めるのかというと、積算価格は誰が計算してもほとんど同じ金額になるからです。
不動産の価格の決定方法は、積算価格の他に2つ(収益価格と比準価格)あるのですが、この2つはどうしても評価する人の「意図」が含まれてしまいます。
同じ銀行が違う評価をすることは問題ですから、銀行は画一的な評価ができる積算価格を採用していることが多いのです。
そして、積算価格と融資可能額は比例するということから、積算価格が高い物件は銀行の融資額も伸びる傾向にあるのです。
さて、ここまで、積算価格が高い → 銀行の評価が高い
ということをお伝えしましたが、銀行の評価が高くなると、なぜ物件価格も高くなるのでしょうか?
次に、融資額と不動産価格の関係について考えていきましょう。
融資が付きやすい=買手が多い=値段が上がる
少しずつ本質的な部分に入っていきます。
そもそもの問題ですが、不動産は高い買い物ですから、銀行からの借り入れは欠かせません。
買手の立場から考えると、物件を購入する時に融資が付くのは嬉しいことですよね。
ただ、ここで意識して欲しいことがあります。
それは、融資が付きやすい物件というのは、買手も沢山いるということです。
具体的な例で考えてみましょう。
ここに、自己資金を1,000万円出さないと買えない物件と、自己資金を1円も出さないで買える物件があったとします。
他の条件が同じであれば、自己資金を出さずに買える物件の方が人気が出るのは当たり前ですよね。
そして、買手が沢山いるとどうなるでしょうか?
同じ不動産に対して買手が殺到するわけですから、競争が起こります。
そして、競争が起こった結果、物件の値上げ合戦がはじまります。
結果、値上げ合戦が始まった物件を買えるのは誰になるでしょうか?それは、一番高い値段を出すことが出来た人です。
つまり、積算価格と物件の値段は、このような関係があるのです。
- 積算評価が出る → 銀行が融資を出しやすい → 買手が多い → 競争が起こる → 不動産の値段が上がる
つまり、積算価格が高い物件は、値段も高くなる傾向にあるのです。
これが、積算価格が高いと不動産の価格も高くなる理由です。
あなたが買いやすい物件は、他の人にとっても買いやすいということを忘れないようにしましょう。
さて、ここからもう一歩踏み込んだ理解に繋げていきましょう。
次に、積算価格の本質についてお伝えしていきます。
金でできた1億円の物件、買いますか?
積算評価の本質に迫っていきます。
ここに、外壁が普通のペンキで塗られている3,000万円の物件と、外壁が金の1億円の物件があったとしましょう。
銀行によるそれぞれの物件の評価は以下だとします。
- ペンキの物件 : 売値3,000万円に対して融資額2,500万円
- 外壁が金の物件 : 売値1億円に対して融資額1.2億円
つまり、外壁が金の物件であれば、自己資金を1円も出すこと無く、不動産を購入することができます。
一方、ペンキの物件の場合、500万円の自己資金を出さなければ購入することはできません。
また、それぞれの不動産を貸した場合に取れる家賃が以下だとしましょう。
- ペンキの物件 : 20万円 / 月
- 金を貼り付けている物件 : 40万円 / 月
それぞれの投資利回りは、ペンキの物件が8%、金の物件が4.8%です。
先程お伝えしましたが、銀行が融資額を決める時に使うのは積算価格です。
そして、外壁が金の物件の方が積算評価は高くなります。だからこそ、金の物件の方が融資額が伸びるのです。
しかし、不動産経営において重要なことは、外壁が金であることでしょうか?
そうではありませんよね。その不動産がどれぐらい効率的に稼いでくれるかが重要です。
つまり、銀行による物件評価というのは、「時価が高い物件ほど評価される」傾向にあり、「収益性は考慮されない」のです。
これは非常に重要なポイントですから、しっかりと押さえるようにして下さい。
すなわち、銀行は、不動産の本質的な価値である「収益性に基づいた評価」ではなく、「不動産の原価に基づいた評価」を行っているのです。そして、それは不動産経営の本質ではないのです。
これが積算評価の事実なのです。
融資が出ることは重要ですが、融資が出るから、という理由で不動産を購入することは危険なのです。
最後に、積算価格について私が話をした時に、投資家から受ける反論と、それに対する私の考えをお伝えします。
時価が上がれば(不動産の値段が上がれば)儲かるのではないか?
不動産の値段が上がれば儲かるというのはその通りです。
しかし、不動産の値段の上昇と積算価格には何の関係もありません。
今積算価格が低くて、将来一気に積算価格が上がるような物件が買えればベストでしょう。
しかし、あなたが購入した不動産の時価があがる保証はどこにもありません。
むしろ、日本では人口が減少している傾向にありますから、その中で不動産の時価が上がるというのは考えづらいです。
積算が出る物件であれば、売却もしやすいから儲かるのではないか?
はい、基本的に積算が出る物件は、売る時も売りやすいのは事実です。
ただ、それは「売却時」と「購入時」で、銀行の融資に対する考え方が変わっていないことが大前提となります。
そして、積算をベースにした評価というのは、不動産投資の本質から考えて正しくありません。
つまり、銀行による不動産の評価方法が変わる可能性は十分あり得るのです。
ですから、今後数年、数十年にわたって銀行による物件評価が変わらない。という前提で不動産を購入するのは危険なのです。
積算が出る物件を買い増して資産を拡大した人がいましたよね?
有名な大家の方で積算を重視して買いましている人が沢山いますよね?という意見もあります。
まさにその通りであり、積算が出る物件をどんどん買い増していくことで資産規模を大きくしていった大家はいました。
しかし、これはあくまでも「積算が高く、さらに収益性も高い物件」という大前提があるのです。
ざっくりとした指標としては、築20年前後のRC、利回り11~12%というイメージです。
こういった物件であれば積極的に買いにいっても良いのですが、フルローンだからといって、利回り7%前後のRCをフルローンで購入することは非常に危険なのです。
また、積算が出るRCを買いまして大儲けした大家は、利回り11%前後で購入したRCを利回り9%前後で売り抜いています。
つまり、積算が高いから、という理由ではなく、たまたまマーケットが上昇していたから儲かっていたのです。
最後に
積算価格を追い求めて不動産を購入してはいけない、ということについてお伝えしました。
積算評価が出るから良い物件。というのは、不動産会社による営業トークである可能性が高いです。
不動産のみならず、事業の本質は、収益を上げることです。融資ではなく、最終的に収益を上げることができる物件をしっかりと探すように心がけましょう。
なお、私が1棟目に購入した物件の概要と、購入を決めた理由についてこちらの記事で紹介していますので、是非参考にして下さい。