仲介会社から「ローン特約付きでとりあえず契約しましょう」と言われたことはないでしょうか?
「ローンが通らなければ契約は無かったことになるから大丈夫です」という説明はあると思いますが、本当に大丈夫なのか心配ですよね。
そこで今回は、ローン特約のリスクと、リスクを避けるためにしっておきたい知識についてわかりやすく解説します。
- 目次
- 1. ローン特約とは?
- 1-1. ローン特約には2種類ある?
- 1-1-1. 解除条件型
- 1-1-2. 解除権留保型
- 1-1-3. どちらが良いのか?
- 2. リスクについて一つずつ解説
- 2-1. 仲介手数料が戻ってこないリスク
- 2-2. 手付金が戻ってこないリスク
- 2-3. 一部融資を前提に契約が進んでしまうリスク
- 2-4. 想定外の条件で融資が通ってしまうリスク
- 2-5. 仲介会社や買主の動きが緩慢だったために解除が認められないリスク
- 3. リスクを減らすために入れておくべき文言
- 3-1. ローンを申し込む金融機関
- 3-2. 期限
- 3-3. 金利
- 3-4. 融資が下りなかった場合の対応
- 3-5. 仲介手数料の請求について
- 3-6. ローン特約文言のまとめ
- 4. 最後に
1. ローン特約とは?
ローン特約とは、ローンが付かなった場合は契約を解除することについて買主と売主の間で約束をするものです。
不動産は高額な買い物ですので、基本的には銀行から融資を受ける人がほとんどですが、売買契約書がなければ銀行は融資の審査を進めることができません。
ただ、売買契約を結んだ後に融資が通らなかったら、買主は困ってしまいます。
そこで、買主を保護するために行う約束がこのローン特約なのです。
1-1. ローン特約には2種類ある?
ローン特約は、実は2つの種類があります。それぞれの種類について整理していきましょう。
1-1-1. 解除条件型
まずは解除条件型です。これは、融資の審査が通らなかった場合自動的に契約が白紙解除されるというものです。
1-1-2. 解除権留保型
次に解除権留保型です。これは、融資の審査が通らなかった場合、買主に契約を解除する権利が与えられるというものです。
つまり、融資の審査が通らなくても、買主が契約を解除しなければその契約は継続するのです。
1-1-3. どちらが良いのか?
上記の二つの型のどちらが良いのかという点については意見が分かれるところですが、一般的には「解除条件型」の方が良いと言われています。
なぜなら、解除権留保型の場合、揉める可能性があるからです。
解除権を留保した場合、実際に解除するためには法律にもとづいた手続きが必要となります。
そして、感情が入りやすい不動産の取引においては、法的なやり取りをすることによって相手の気持ちを害してしまい、結果として揉める可能性が高まってしまうのです。
2. リスクについて一つずつ解説
ここから、ローン特約条項に関するリスクについて解説していきます。
基本的には、お互いに疑義が残らないよう、細かい部分まで意識した文言作りが重要になってくるのですが、はじめて契約する場合はどういった疑義が生じるのかイメージが湧かないですよね。
まずはどういったリスクがあるのかという点について理解していきましょう。
2-1. 仲介手数料を請求されるリスク
売買契約締結後、融資の審査が通らなかったことにより契約が白紙解除された場合、仲介会社から仲介手数料を請求される場合があります。
なぜなら、仲介会社の仕事が不動産の仲介(買手と売手を繋ぐ)であるのならば、契約を締結した時点で仲介という仕事は達成したと考えられるからです。
一見、最もらしく感じる理由ではありますが、買主としては自分でコントールできない「融資」を理由に契約が解除になったにも関わらず手数料を払わされたのでは参ってしまいますよね。
大きなリスクの一つとして、ローン特約によって契約が解除されても仲介手数料を請求されるリスクがあるということをしっかりと認識しておきましょう。
2-2. 手付金が戻ってこないリスク
手付金は契約価格の5%~10%であることが多いため、手付金が戻ってこないことは怖いですよね。
基本的に契約が解除になれば、そもそも契約がなかったことになりますので、手付金も当然返還しなければいけません。
ただ、一度貰ったお金は返したくないというのが正直な買主の気持ちですから、この手付金が戻ってこない可能性もあるのです。
ローン特約を原因として手付金のトラブルが発生することは少ないですが、それでも手付金が戻ってこないリスクがあるということはしっかりと認識しておきましょう。
2-3. 想定外の条件で融資が通ってしまうリスク
銀行による貸し出し金利はそれぞれ異なります。
そして、その金利は大手の銀行ほど低く、地方銀行やノンバンクになるにつれて高くなっていきます。
金利が数パーセント違うだけでも不動産経営には大きなインパクトがありますので、できれば低い金利で融資を組みたいですよね。
一方、不動産の仲介会社は引き渡しが完了しなければ手数料が入ってきません。
つまり、案件を成立させるために、高い金利であっても融資を通そうとしてくる可能性があるのです。
日本には1,500を超える金融機関がありますので、あなたが想定しないような金融機関で融資が通ってしまうのは非常に大きなリスクと言えるでしょう。
漠とした文言では、想定しない金融機関でローンが通ってしまうリスクがあるということを認識しておきましょう。
収益物件の購入において使える金融機関については、【保存版】不動産投資の融資を有利に組むために必要な銀行の全知識という記事を参考にしてください。
2-4. 仲介会社や買主の動きが緩慢だったために解除が認められないリスク
最後に、仲介会社や買主の動きが緩慢だったために解除が認められないケースについてです。
契約はお互いに誠意をもってしっかりと履行させるように努める義務があります。
契約=約束ですから、約束はしっかりと守るようお互いに努力しましょう。ということです。
買主の属性から考えるローンは当然組成できる、といった場合に融資が組めないと、売主からその理由を追及される可能性があります。
融資の組成するためにしっかりと動いていれば問題はないのですが、こういったリスクもあるということは頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
特に仲介会社に融資付けのお願いをしている場合は注意が必要です。
3. リスクを避けるために入れておくべき文言
ここから、ローン特約に関するリスクを避けるために入れておくべき文言についてお伝えしていきます。どれも重要ですので、しっかりと契約書に反映させるようにしましょう。
3-1. ローンを申し込む金融機関
まずはローンを申し込む金融機関です。メガバンク、といった曖昧な記載では疑義が生じる可能性がありますので、しっかりと個別の金融機関の名前を書くようにしましょう。
3-2. 期限
ローンの承認期限は必ず記載しておくようにしましょう。基本的には、2~3カ月あれば銀行は融資の判断をすることが可能です。
3-3. 金利
金融機関に加え、希望する金利についても併せて記載をしておくようにしましょう。若干幅をもたせて1.2%~1.5%といった記載でも構いません。
3-4. 融資が下りなかった場合の対応
期限までに融資の承認が下りなかった場合は白紙解除するという文言を入れましょう。具体的な文言としては以下のような言葉を入れると良いでしょう。
「買主の責に帰すことのできない事由により、標記指定の記事までに融資の全部又は一部について承認が得られなかったときは、本契約は白紙となるものとする。この場合、売主は、受領済みの金員(手付金)を無利息にて速やかに買主に返還しなければならない。」
3-5. 仲介手数料の請求について
ローンがつかなかった場合に契約が解除されたとしても、仲介会社から手数料の請求を受けないようにするため、仲介手数料の請求は引渡時にするという文言を入れると良いでしょう。
具体的には、媒介契約書に「媒介に対する役務の提供は本物件の引き渡しが完了したことをもって完了するものとし、契約が解除された場合は媒介は成立していないものとする」といった文言を入れると良いでしょう。
3-6. ローン特約文言のまとめ
上記の記載をもとに、ローン特約の文言を作成しましたので、参考にして下さい。
(売買契約書)
- 融資申請先金融機関 : XX銀行、YY銀行
- 金利 : XX%~YY%
- 期限 : XX年XX月XX日
買主の責に帰すことのできない事由により、融資の全部又は一部について承認が得られなかったときは、買主はこの契約を無条件で解除することができる。売主は、受領済みの金員(手付金)を無利息にて買主に返還しなければならない。
(媒介契約)
媒介に対する役務の提供は本物件の引き渡しが完了したことをもって完了するものとし、契約が解除された場合は媒介は成立していないものとする。
4. 最後に
ローン特約の内容と、リスクを避けるために知っておくべきことについてお伝えしました。
今回ご紹介した文言はしっかりと契約書に入れ込み、リスクを減らした上で契約をするようにしましょう。
なお、売買契約の締結に先立ち、売買契約書の文言についてしっかりと確認したい方は、不動産の売買契約書で確認しなければいけない18のポイントという記事を参考にして下さい。
また、収益物件の融資で使える金融機関についてまとめて理解したい方は、【保存版】不動産投資の融資を有利に組むために必要な銀行の全知識という記事を参考にして下さい。
この記事があなたの収益物件購入の一助となれば幸いです。