不動産を売却することになったけど、売却後の税金がどうなるのか分からない。そういった方も多いのではないでしょうか?
せっかくなら売却後の税金は低くおさえたいもの。
そこで今回は、不動産の売却に伴って発生する税金の種類と計算方法について解説させていただきます。
- 目次
- 1. 不動産の売却時に発生する税金の種類
- 2. 所得税
- 2-1. 所得(儲け)を計算する
- 2-2. 売却価格とは?
- 2-3. 購入価格とは?
- 2-4. 費用とは?
- 2-4-1. 売却時の費用
- 2-4-2. 購入時の費用
- 2-4-3. 保有時の費用
- 2-5. 税率を計算する
- 2-5-1. 個人の場合
- 2-5-1-1. 保有期間を計算する
- 2-5-1-2. 税率を出す
- 2-5-2. 法人の場合
- 2-6. 納税額を計算する
- 2-7. 払うタイミング
- 2-7-1. 個人の場合
- 2-7-2. 法人の場合
- 3. 住民税
- 3-1. 納税額を計算する
- 3-2. 払うタイミング
- 3-2-1. 個人の場合
- 3-2-2. 法人の場合
- 4. 印紙税
- 4-1. 納税額を計算する
- 4-1-1. 不動産売買契約書
- 4-1-2. 領収書
- 4-2. 払うタイミング
- 4-3. 実務上知っておくと良いポイント
- 4-3-1. 契約書の作成を1通にすれば印紙税は1通分だけで済む
- 4-3-2. 海外で契約を締結した場合は印紙税は発生しない
- 5. 登録免許税
- 5-1. 納税額を計算する
- 5-2. 払うタイミング
- 6. 消費税
- 6-1. 納税額を計算する
- 6-2. 払うタイミング
- 7. 税金の控除制度について
- 8. 最後に
1. 不動産の売却時に発生する税金の種類
まずは、不動産を売却した場合にどういった税金が発生するのかという点について整理していきましょう。
不動産売却時に発生する税金の種類は大きく5種類あります。
一つ目が所得税、二つ目が住民税、三つめが印紙税、四つ目が登録免許税、そして五つ目が消費税です。金額の大きさごとに簡単にイメージを載せさせていただきます。
薄い色の項目は、場合によっては発生しない税金です。
上の図を見ていただくと、所得税と住民税の金額が大きいことがお分かりいただけるのではないかと思います。
ここから順番にそれぞれの税金の内容について見ていきましょう。
2. 所得税
まずは所得税についてみていきましょう。不動産の売却によって発生する税金の中では、最も大きい金額になるのがこの所得税です。
所得税とは、儲けに対して払う必要がある税金のことです。
つまり、所得税の計算においては、どれぐらい儲けたのかという点についてしっかりと計算をしなければいけません。
早速その具体的な計算方法について見ていきましょう。
2-1. 所得(儲け)を計算する
ここから不動産の売却に伴って発生する所得(儲け)をどうやって計算するのかという点について見ていきましょう。
まずは所得が何なのかという点について、簡単に図でお伝えさせていただきます。
簡単なイメージとしては、①売却価格から②購入価格と③費用を引くことによって所得(儲け)を計算することができます。
つまり、所得を計算するためには上記3つについて知る必要がありますので、売却価格、購入価格、費用が具体的にどういった内容なのかという点について見ていきましょう。
2-2. 売却価格とは?
まずは売却価格が何なのかという点について見ていきましょう。
売却価格とは、不動産の売買契約書(売却時)に書かれている金額のことです。
2-3. 購入価格とは?
次に、購入価格とは何かという点について見ていきましょう。
購入価格とは、不動産の売買契約書(購入時)に書かれている金額のことです。
購入価格も売却価格も契約書に明確に書かれていますので、分かりやすいものではないかと思います。
2-4. 費用とは?
次に費用が何なのかという点についてみていきましょう。この「費用」の整理が所得を計算する上で一番重要となります。少し細かく分け、①売却時に発生する費用、②購入時に発生する費用、③保有時に発生する費用の3種類に分けて考えていきましょう。
2-4-1. 売却時の費用
まずは売却時に発生する費用について見ていきましょう。
売却時に発生する費用としては、仲介手数料が挙げられます。
仲介手数料は基本的には売却価格の3.24%ですが、売却価格によって異なってきますので、詳細についてしっかりと把握したい方は、仲介手数料とは?不動産売買における仲介手数料の計算方法を詳細に解説というコラムを参考にしていただければと思います。
2-4-2. 購入時の費用
次に、購入時に発生する費用について見ていきましょう。購入時に発生する費用は複数あります。
- 仲介手数料
- 司法書士への報酬
- 金融機関への報酬や融資手数料
これらの金額の細かい内容については、別途コラムで紹介させていただきますので参考にしていただければと思います。
2-4-3. 保有時の費用
最後に保有時の費用について見ていきましょう。
保有時に費用として認識できる項目は沢山ありますが、その内容については不動産投資で経費にできる項目23個を紹介というコラムにて紹介させていただいておりますので、そちらを参考にしていただければと思います。
2-5. 税率を計算する
ここまでの検討で、不動産の売却に伴って発生する所得の金額を計算することができました。
次に、所得(利益)に対して発生する税率について見ていきましょう。税率のイメージに関しては、以下の図を参考にしていただければと思います。
儲けの金額に対し、一定の税率をかけて納税額を計算することになります。そして、税率は売主が個人の場合と法人の場合で異なりますので、それぞれの場合において具体的に税金がどうなるのか見ていきましょう
2-5-1. 個人の場合
まずは個人の場合です。順番に税率の計算方法について見ていきましょう。
2-5-1-1. 保有期間を計算する
不動産を売却した際に発生する税率は、不動産を保有した期間によって変わってきますので、不動産を保有していた期間を計算することが必要となります。
基本的には5年間保有していたかどうかで税率が変わってくるのですが、この計算は1月1日を起点とすることに注意する必要があります。
以下簡単に図でイメージを作成させていただきましたので参考にしていただければと思います。
上記図の上のパターンの場合、実質的な保有期間は5年以上ですが、保有をはじめてから1月1日を5回しかまたいでいないので、短期保有とされます。
また、上記図の下のパターンの場合、保有をはじめてから1月1日を6回またいでいるので、長期保有とされます。
このように、保有を開始した日から売却完了日までのタイミングで、何回1月1日をまたいだかで短期保有か長期保有かに分けられるという点にまずは注意しましょう。
2-5-1-2. 税率を出す
保有期間が分かれば税率を出すことができます。売主が個人である場合における税率は以下の通りです。
税率* | |
短期保有 | 30% |
長期保有 | 15% |
上記の通り、保有期間に応じてその税率も大きく異なるということがお分かりいただけるのではないかと思います。
*平成25年から平成49年までは復興特別所得税として、納税額 x 2.1%を別途納める必要があります。
2-5-2. 法人の場合
次に、法人の場合について見ていきましょう。法人の場合は保有期間による税率の違いはありません。
税率は所得や資本金や法人が設立されている地域によって異なりますが、おおよそ25%と考えておけば良いでしょう。
2-6. 納税額を計算する
上記にて納税額を計算するための材料は全て揃いました。改めて簡単に納税額計算までのイメージをのせさせていただきます。
2-7. 払うタイミング
最後に、所得税を払うタイミングについて整理していきましょう。
個人の場合と法人の場合においてはらうタイミングが異なりますので、それぞれの場合における納税のタイミングについて記載させていただきます。
2-7-1. 個人の場合
所得税を払うタイミングは、個人の場合は売却を行った次の年の3月中旬(確定申告の提出締め切り)までに払う必要があります。
2-7-2. 法人の場合
法人の場合は設立時に設定した決算期から2か月以内に所得税を支払う必要があります。
3. 住民税
不動産を売却した時に発生する所得に関しては、所得税に加えて住民税も発生します。
3-1. 納税額を計算する
住民税は上記2.で紹介させていただいた譲渡所得に対して発生します。そして、その税率は以下の通りです。
税率 | |
短期保有 | 9% |
長期保有 | 5% |
3-2. 払うタイミング
住民税を払うタイミングも所得税と同様、個人の場合と法人の場合で異なりますますが、納めるタイミングは同じですので、詳しくは所得税の納税のタイミングを参考にしていただければと思います。
3-2-1. 個人の場合
個人の場合、住民税は売却した年の次の年の6月、8月、10月、2年後の1月末に分けて支払います。(一括で払うこともできます。)
以下に簡単にイメージを載せさせていただきますので、参考にしていただければと思います。
3-2-2. 法人の場合
法人の場合は所得税と同様、決算期の2か月後までに支払います。
4. 印紙税
次に発生するのが印紙税です。
印紙税とは印紙税法に基づき、特定の書類に対して発生する税金です。
不動産の売却に伴って発生する書類には、大きく以下の4種類があります。
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 抵当権抹消書類
- 領収書
上記のうち、売買契約書と領収書に関しては、印紙税法にもとづいて税金を払わなければいけません。
4-1. 納税額を計算する
印紙税の金額は契約書に書かれる売買金額などによって異なりますので、不動産売買契約書と領収書の2種類に関し、具体的にどれぐらいの税金が発生するのかお伝えさせていただきます。
4-1-1. 不動産売買契約書
不動産の売買契約書は印紙税法の第1号の1文書に該当します。そして、第1号の1文書の印紙税額は以下の通りです。
契約金額 | 印紙税の金額 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円~100万円 | 1千円 |
100万円~500万円 | 2千円 |
500万円~1,000万円 | 1万円 |
1,000万円~5,000万円 | 2万円 |
5,000万円~1億円 | 6万円 |
1億円~5億円 | 10万円 |
ただし、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成された契約書に関しては、税率が上記の半分となります。(10万円の時だけ4割減の6万円となります)
以下に売買契約書の金額が1,000万円から1億円の場合における印紙税額を記載したグラフを載せさせていただきますので、参考にしていただければと思います。
4-1-2. 領収書
買主から売買代金を受け取った場合は基本的に領収書を発行する必要があります。
そして、領収書に貼る印紙税の金額は領収書に書く金額によって異なってきます。印紙税の金額の詳細については以下の表を参考にしていただければと思います。
領収書の金額 | 印紙税の金額 |
5万円超~100万円以下 | 200円 |
100万円~200万円 | 400円 |
200万円~300万円 | 600円 |
300万円~500万円 | 1,000円 |
500万円~1,000万円 | 2,000円 |
1,000万円~2,000万円 | 4,000円 |
2,000万円~5,000万円 | 6,000円 |
5,000万円~1億円 | 10,000円 |
1億円~2億円 | 20,000円 |
2億円~3億円 | 40,000円 |
以下に売買契約書の金額が1,000万円から1億円の場合における印紙税額を記載したグラフを載せさせていただきますので、参考にしていただければと思います。
4-2. 払うタイミング
印紙税を払うタイミングは、書類の効力が発生したタイミング。すなわち、書類に対してサインを行ったタイミングとなります。
実務上は、契約書にサインするタイミングに合わせて印紙を貼るという形です。
4-3. 実務上知っておくと良いポイント
ここからは、印紙税の納税において知っておくと得をする情報についてお伝えさせていただきます。
4-3-1. 契約書の作成を1通にすれば印紙税は1通分だけで済む
印紙税は作成した書類に対して発生し、コピーされた書類については印紙税は発生しません。
コピーの契約書でも契約が行われたという事実を証明することができますので、後々もめた場合でもコピーを持っておけば不利になる可能性は低いですが、この辺りは最新の判例などによっても見解が異なってくる可能性がありますので、心配な方は弁護士の方にご相談されることをお勧めします。
4-3-2. 海外で契約を締結した場合は印紙税は発生しない
また、契約の成立が海外でなされた場合においても印紙税は発生しません。
この場合における契約の成立とは、契約当事者双方がサインを完了した瞬間のことです。
高額の不動産を売る場合には、印紙税の節約のために近くの外国に行った上で署名を行うという考え方もあるかもしれません。
5. 登録免許税
登録免許税とは、登記を行う際に発生する税金です。
(登録免許税自体は、登記のみならず、特定の資格の認定などを行う際に発生する税金です。)
5-1. 納税額を計算する
不動産の売却時に発生する登録免許税は、抵当権の設定を解除する際に必要となります。
そして、その金額は書類1通につき一律で1,000円です。
5-2. 払うタイミング
登録免許税を払うタイミングは、登記を行うタイミングです。
今回の場合は、抵当権を抹消する登記を行いますので、抹消登記の書類を登記官に提出するタイミングで税金を払います。
基本的に抵当権の抹消は司法書士の先生にお願いすることが多いですので、実務上は全て司法書士の先生が行ってくれ、最後にまとめて費用を払うという場合が多いです。
6. 消費税
最後に、消費税が発生します。消費税とは、特定のモノやサービスが生じた場合に発生する税金のことです。
ただし、消費税を納める義務があるのは法人のみです。
個人として不動産を保有している場合に不動産を売却した場合には消費税は発生しません。
6-1. 納税額を計算する
消費税の税率はご存知の通り8%です。
他方、納税額の計算においては、不動産の建物部分にだけ消費税が発生することに注意する必要があります。
そして、土地と建物の割合については、基本的には売買契約書に記載されますので、そこを意識しておくと良いでしょう。
この点について詳しく知りたい方は、土地と建物の具体的な按分方法3つを分かりやすく解説というコラムを参考にしていただければと思います。
6-2. 払うタイミング
消費税を払うタイミングは決算期から2月以内に支払う必要があります。法人の場合は所得税、住民税も決算期から2か月以内に払う必要がありますので、全ての税金を一度に払うと認識していただければ良いでしょう。
7. 税金の控除措置に関して
上記2.又は3.に関しては、税金の控除措置をとることができます。
控除措置についてしっかりと整理したい方は、不動産売却時に発生する税金の控除措置で知っておくべきポイントというコラムを参考にしていただければと思います。
8. 最後に
不動産の売却時に発生する税金の計算方法についてお伝えさせていただきました。計算方法と税金の控除措置をしっかりとおさえ、納税額をできるだけ減らすようにしましょう。