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    海外転勤で持家を賃貸に出した際の書類・確定申告の手続きを徹底的に解説

    海外転勤のイメージ

    急に海外転勤が決まったので、留守の期間中誰かに部屋を貸したい。

    しかし、賃貸した場合にどういった形で会計処理をすれば良いか分からない。

    そもそも海外転勤が決まった際に何の手続きをすれば良いか分からない。

    こういった方も多いのではないでしょうか?

    そこで今回は、持家を持っている方が海外転勤した場合の手続きと、賃貸に出した場合の会計処理方法について分かりやすく説明します。

    1. 持ち家を賃貸に出すってどういうこと?

    持家を賃貸に出すことによってどうなるのか?という点についてまず考えていきましょう。

    結論からお伝えすると、持家を賃貸に出すことによって「個人事業主(賃貸事業主)」になります。

    そして、個人事業主として収入を得た場合、確定申告をする必要があります。

    つまり、持ち家を賃貸に出すということは、不動産賃貸業として事業を始め、その利益に応じて税金を納めなければいけないということです。

    家賃収入を得ているにも関わらず、確定申告をしなかった場合は税務署からペナルティを受けることもありますので、しっかりと手続きを進めるようにしましょう。

    なお、手続き関連の詳細については、国税庁の以下のページが参考になります。

    国税庁タックスアンサー、海外勤務になったときはコチラ

    1-1. 事業用物件と非事業用物件

    持家を賃貸に出す場合、もう一つ意識しておくべきことがあります。

    それは、持家を賃貸に出した場合、投資用で購入した不動産とは異なる減価償却の形を取るということです。

    持家を賃貸に出した場合の減価償却の進め方はこの記事で紹介していますが、はじめから投資用として物件を購入した場合は海外在住している時の確定申告の手続き全て【収益物件保有者向け】という記事を参考にして下さい。

    この記事では、持家を賃貸に出した場合の減価償却の手続きについて詳しく解説していきます。

    なお、国税庁のサイトにもまとめがあります。そちらを参考にしたい方は、国税庁の非業務用資産を業務の用に供した場合というページを参考にして下さい。

    2. 転勤決定後から転勤まで

    ここから具体的な手続きについて見ていきましょう。

    まずは大きな流れから整理していきます。

    海外転勤が決まったら、出国までに一度確定申告を終わらせ、新たに個人事業主として税務署に申請をする必要があります。

    税法上、どういった人が税金を納めなければいけないのかという点についてまとめましたので、以下の図をご覧ください。

    所得税法上の納税区分

    区分 納税対象となる所得
    居住者 すべての所得
    非永住者 一定の国内源泉所得等
    非居住者 一定の国内源泉所得

    海外転勤をする場合、その期間が1年を超える場合は非居住者となります。

    つまり、海外で貰う給料に対して日本で税金を支払う必要はなくなります。

    一方、非居住者は一定の国内源泉所得に対して税金を払う必要があり、持家を賃貸に出すことによって得られる収入は一定の国内源泉所得に含まれます。

    つまり、海外転勤をした場合、非居住者として、賃貸収入に対して税金を払う必要があるのです。

    2-1. 会社から異動に関する書類をもらう

    ここから具体的な手続きについて見ていきましょう。

    まずは、勤めている会社から異動に関する書類を貰いましょう。具体的には、異動することを示した書類をもらいましょう。

    なお、1年を超えて海外に居住することが予定されている場合にはじめて「非居住者」となりますので、異動に関する書類についてはおおよその赴任期間もしっかりと記入してもらうようにしましょう。

    2-2. 税務署に書類を提出する

    次に、税務署に必要書類を提出します。提出する書類を以下にまとめましたので参考にしてください。

    2-2-1. 開業届

    初めて家賃収入を得る場合は、開業届を提出しましょう。厳密には提出しなくてもペナルティはないのですが、開業届を提出することによって青色申告という税制上のメリットを受けることができます。

    開業届はコチラ

    2-2-2. 青色申告承認申請書

    上記の通り、開業届を提出することによって青色申告という条件で確定申告を行うことが可能になります。

    この青色申告のメリットを受けるためには、書類を提出しておく必要があります。当該書類を下記しますので、参考にしてください。

    所得税の青色申告承認申請書はコチラ

    2-2-3. 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書

    住宅ローン控除の申請をしている方は、海外転勤中は住宅ローン控除を受けられないのですが、その期間を適用期間から除外するために必要とされる書類です。

    転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書はコチラ

    2-2-4. 住宅ローン控除書類

    2-2-3.の書類と合わせ、住宅ローン控除関連の書類を一度税務署に返還する必要があります。

    2-3. 納税管理人を指定する

    税務署に提出する必要書類と関係してきますが、確定申告をする際、確定申告関連の書類を提出する納税管理人を指定する必要があります。

    納税管理人はあなたに代わって確定申告書を提出する人ですが、これは誰でも構いません(税理士でなくても良いです)。

    納税管理人指定の書類はコチラ

    この書類も上記の必要書類と合わせて税務署に提出しておきましょう。

    3. 転勤中の確定申告手続き(減価償却の計算)

    転勤決定後の手続きの次に、転勤中にやらなければいけないことについて見ていきましょう。

    転勤中にやらなければいけないことは確定申告の手続きです。

    書類の提出は納税管理人に任せれば良いので、確定申告において必要な会計処理手続きについて見ていきましょう。

    なお、はじめから事業用として不動産を購入した場合は海外在住している時の確定申告の手続き全て【収益物件保有者向け】という記事を参考にしてください。

    また、確定申告書類の記入方法については、サラリーマンで不動産収入がある場合の確定申告の手続き全てという記事に詳しくまとめていますので、そちらを参考にして下さい。

    ここでは、持家を賃貸に出した場合の減価償却の手続きを中心に解説していきます。

    3-1. 簿価を算出する

    まずは、賃貸に出す不動産の簿価を計算しましょう。

    不動産の取得時に簿価として計上できる費用の詳細については、【仲介手数料は簿価に含める?】収益物件購入時の経費・資本計上の区分を詳細に解説という記事を参考にして下さい。

    結論としては、仲介手数料を簿価に含める形になります。

    簿価の計算

    3-2. 簿価を土地と建物に按分する

    次に、計算した簿価を土地の分と建物に按分する必要があります。按分が必要な理由は、減価償却ができるのは建物部分だけだからです。

    なお、具体的な按分方法については土地と建物の具体的な按分方法3つを分かりやすく解説という記事を参考にして下さい。

    一番わかりやすいやり方は、土地と建物の固定資産税評価額に応じて按分するというやり方です。固定資産税評価額の詳細について知りたい方は、固定資産税評価額の計算方法をわかりやすく解説という記事を参考にして下さい。

    3-3. 償却年数を計算する

    次に、減価償却の進め方について整理していきましょう。一般的な収益物件の減価償却の進め方について理解したい方は、不動産の減価償却の仕組みと計算方法を詳細に解説という記事を参考にして下さい。

    まず、耐用年数を計算します。非事業用資産の耐用年数は、事業用資産の1.5倍(1年未満切り捨て)です。以下の表に耐用年数を整理しましたので参考にしてください。

    構造 事業用 非事業用
    木造 22年 33年
    軽量鉄骨 27年 40年
    重量鉄骨 34年 51年
    RC 47年 70年

    次に、償却年数を計算していきましょう。償却年数の計算は、上記の耐用年数から購入時の築年数を引くだけです。

    例えば、築10年の木造を購入した場合、耐用年数は33年ー10年=23年です。

    3-4. 居住中の償却額を計算する

    居住中の償却額を計算していきましょう。

    この計算は旧定額法を用います。旧定額法とは、償却後に残存価値として10%分を残すという償却方法です。

    簿価の90%の金額に、経過年数分の償却額を引くのですが、これは図でイメージした法が分かりやすいですので、以下の図を参考にして下さい。

    定額法と旧定額法

    3-5. 事業に出している間の減価償却費を計算する

    海外転勤中の場合の減価償却費の計算は事業用不動産の場合と同じです。すなわち、持家の場合に適用された償却期間1.5倍のルールが適用されないということに注意しましょう。

    4. 実際に減価償却費を計算

    ここから、実際に持家を賃貸に出した場合の減価償却費について計算していきましょう。

    4-1. モデルを作る

    今回は、以下の条件を前提としましょう。

    築20年のRCを5,500万円で購入したAさん。購入後、9年6カ月経ったタイミングで海外転勤が決まったとします。

    4-2. 簿価を計算

    まずは、海外転勤が決まったタイミングでの簿価を計算しましょう。

    非事業用RC物件の法定耐用年数は70年であり、Aさんは築20年のタイミングで購入していますので、残りの償却期間は50年です。

    そして、この50年の期間中で10年分(6か月分未満は切り捨て、6カ月以上は切り上げます)の償却費を計算します。

    以下にイメージをのせますので、参考にして下さい。

    保有中の償却額の計算

    上の図における10年目の簿価は4,500万円です(5,500万円ー500万円=5,000万円。5,000万円/50年=100万円/年から)。

    4-3. 賃貸中の償却額を計算

    簿価の計算ができましたので、次に賃貸中の償却額を計算しましょう。

    賃貸中は、償却期間1.5倍ルールは適用しませんので、RCの場合は47年を前提として計算していきます。

    すなわち、一年間で償却する金額は4,000万円/47年≒85.1万円が一年間で計上することができる金額です。

    なお、この減価償却費は月単位で計算することに注意しましょう。

    例えば、賃貸に出したのが7月の場合、その年の確定申告で計上できる金額は85.1 * 6カ月 / 12か月=42.6万円となります。

    4-4. 帰国後の減価償却の手続きは?

    帰国後の減価償却の手続きは、そのまま賃貸に出す場合は4-3の方法に従って行い、再びマイホームとして住む場合は4-2.の方法に従って簿価を減らしていきます。

    マイホームとして住む場合は確定申告の必要はなく、償却費は計上しませんので、また改めて海外転勤する場合の簿価の計算に使うと考えて下さい。

    5. 帰国後の手続き

    最後に、帰国後にやるべき手続きについて解説します。

    5-1. 基本的には何もやらなくてよい

    海外転勤から戻ってきた場合、基本的には持家に再度住む場合と、持家を賃貸に出し続けるという二つの選択肢があるかと思いますが、どちらの場合においても、基本的になにもやる必要はありません。

    5-2. 持家に住んだ場合、次の年から住宅ローン控除が適用できる

    一点、やっておいた方が良いこととして、住宅ローン控除の申請が挙げられます。

    マイホームを購入した年は、住宅ローン控除の申請をするために確定申告を行ったと思いますが、海外転勤から戻ってきた際には、改めて住宅ローン控除の手続きを行う必要があります。

    なお、年の途中に戻ってきた場合、その年の住宅ローン控除は受けられないという点に注意しましょう。

    6. 最後に

    海外転勤で持家を賃貸に出した場合の確定申告の手続きについて解説しました。

    海外転勤が決まるとバタバタしてしまい、手続きなどがおろそかになりがちですが賃貸収入を得た場合は確定申告を行う必要があります。

    後で税務署から調査がきて焦ることがないよう、しっかりと手続きを進めていきましょう。

    この記事を書いた人:大橋亮太

    三井物産株式会社で約7年働いた後、2015年に株式会社ムーブウィルを設立。両手仲介への違和感から買側の仲介に入ることを止め、売主側の味方だけをするサイト「売主の味方」を立ち上げる。

    ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士

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